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□ワンコシリーズ!
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〜ワンコは心配性〜


「もうすぐ魔法の効果切れてまうなぁ」


呟きながら木乃香は名残惜しそうに明日菜の垂れた黒耳を撫でる。
その明日菜と言うと、飼い主に弄り倒されたのか心持ちグッタリとしながら、それでも撫でられている事が嬉しいらしく緩々と尻尾を振っていた。


「はぁ、こっちは散々だったわよ」
「あはは。お疲れ様でした」
「誰のせいだと思ってるのよ……ん?」


ジト目で木乃香を睨んでいた明日菜がポケットの中で震える携帯に気付く。
取り出して見てみると、それは刹那からのメールで内容は至極簡潔なモノだった。
木乃香はメールが気になるのか身を乗り出して問う。


「せっちゃんからメール?」
「うん。今日の修行は出来なくなったって。急用らしいよ」


携帯を閉じながら明日菜は苦笑を浮かべて言う。


「まあ、私もこんな恰好じゃ行けなかったけどね」
「…………」
「このか?」


急に黙り込んだ木乃香を不審に思ったのか明日菜は覗き込むように顔を近づける。


「……なぁ、アスナ。せっちゃん、まだ危ない事しとるんかなぁ」
「あー……大丈夫よ、刹那さんはスッゴク強いんだから」
「せやけど……」


心配そうな表情を浮かべる木乃香に明日菜は殆ど無意識に顔を寄せ……


「っ!?ア、アスナ……ちょ……!」


あろう事か木乃香の口を舐めだした。
何回も何回も繰り返し飽きる事なく、木乃香の言葉にも反応を示さない。


「アスナ……ちょぉ、くすぐったい……」
「…………」
「っ、それ以上は……」
「…………あれ?」


あと一歩で木乃香の理性が崩れ落ちるその時、ようやく明日菜が口を舐める事を止めてポカンとした表情を浮かべた。


「このか……私、ちょっとだけ記憶飛んだんだけど……何かした?」
「……んーん、なんもしとらへんよ」
「そう?何か物凄いコトをしたような……」


首を傾げる明日菜に木乃香は真実を伝えない事にした。
真実を知れば二度と明日菜は今日のようにワンコにはなってくれないと悟ったから。


「そんなコトよりもアスナ、耳戻ってるえ?」
「あ、ホントだ」


ついに明日菜にかけられた魔法の効果が切れた。


「残念やわ〜。またワンコになってくれる?アスナ」
「……休みの日だったらね」


フイと横を向いた明日菜の元に戻った耳は真っ赤に染まっていて、木乃香は満面の笑みを浮かべてワンコをギュッと抱きしめたのだった。



次の日、図書館島。


「なるほど……」
「どうしたんですか、お嬢様。犬の生態の本を読みたいだなんて」
「ん、ちょっと昨日ワンコに口舐められてな。理由を知りたかっただけ」
「ワンコ、ですか?」
「そや。可愛えで〜」
「そうなんですか。ぜひ一度会わせて下さい」
「ええよー」


そう言った木乃香は心の中で『せっちゃんも知っとるワンコやけどな』と舌を出し、立ち上がった。


「そろそろ行こか、せっちゃん。今日もアスナと修行やろ」
「はい」


立ち去る木乃香と刹那。
そこに残された本にはこう書かれていた。


『犬が口を舐めるのは飼い主を心配しているからです』


と。



FIN。。。
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