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□ワンコシリーズ!
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〜飼い主な君〜


「このかー……いい加減外してよ……」
「いーや」
「いやって……流石にコレはどうかと……」


休日の643号室、神楽坂明日菜はうんざりとした様子でソファーに座るルームメイトを見上げていた。
ルームメイト――近衛木乃香はそんな明日菜を見て笑みを浮かべる。


「ええやん、よお似合っとるで?」
「嬉しくないわよ、首輪が似合うなんて」


複雑な表情で自身の首に巻かれている首輪(大型犬用)に指先で触れる明日菜。
ちなみに未だに犬耳は顕在であり、髪を結った今では何かを喋る度にその垂れた黒い耳と尻尾がピクピクと動いていた。
木乃香は木乃香でそんな明日菜の様子を楽しんでいるらしく、先程から笑みを絶やさない。


「首輪もそうだけど……何で私は床に座ってるのよ」


そう呟く明日菜の言う通り、今ソファーに座っているのは木乃香のみ。
二人掛けのそれには明日菜が座るくらいの余裕はあるのだが……


「アスナ、ワンコはソファーに乗ったらあかんえ?」
「いやいや!私は人間ですから!犬じゃないですから!」
「アスナ」
「う……」


ああ、哀しいかな。
魔法によって飼い主(木乃香)の言う事を聞いてしまう体質になった明日菜は黒い尾をお腹側に巻き込んで黙り込んでしまった。
そんな明日菜に木乃香は更に笑みを深めてから自らの膝を叩きながら言う。


「ここやったらええよ」
「は!?」
「ほら、おいで」
「や、やっぱり体が勝手にぃぃぃ!?」


もはや選択権なんてモノは明日菜にはなく、木乃香が言うがままに上半身だけを膝に乗せて上目遣いに見上げる。


「こ、このか……ちょっとこれは色々と問題が……」
「ほーら、アスナ。ここ気持ちええやろ?」
「ん……」


犬耳の付け根を指先で掻く木乃香。
明日菜はそれを喉を鳴らし尻尾を左右に振って気持ち良さそうに受け入れる。


「もー、かわええんやから!アスナは!」
「べ、別に気持ち良いとかじゃないんだからね!」
「はいはい」


口ではそう言うが体は正直なワンコに飼い主は満面の笑みを浮かべてこう言った。


「ずっとこのままでおる?」
「っ!?それだけは!」


この後、ワンコがどうなったかはまた別のお話で……



FIN。。。
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