青い空と白い雲

□2.5・理由
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今でも、“あの日”の事は、はっきりと覚えている。


あの日、季節はずれの爆弾低気圧のせいで、まるで台風のような豪雨だった。

向かい風で傘を斜め前に突き出していたからほとんど前が見えない状態で、さらに鞄や服、足元が傘の意味がないくらい、びしょ濡れになっている。
 
でも、あの時の私はそんなのも気にする事なく急いで帰っていた。

横断歩道に差し掛かると信号が豪雨のせいで、とぎれとぎれに聞き取れる音で青信号をつげていたから


あの時の私は周りも確かめず前に歩きだしていた。


まさか


車が突っ込んで来るなんて


考えもしない。

でも、気づいた時には遅すぎた。


鈍い痛みと、ともにお気に入りの傘が空中に舞う。

私は意識を失い、次に目を醒ました場所は病室のベッドの中だった。
 
 
 
今でも、私は覚えてる。

目が醒めて始めに右手を

確認したことを

包帯を巻かれた右手が、ちゃんと動いたことを

なのに今の私は、何故あの時そこまで、右手にこだわっていたのかわからない。

私は何を忘れているのだろう。



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