1周年記念!
□(立海式カラオケ)
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「のうー名無しー。」
『はいはい?』
部活中に仁王君に声をかけられた。
落ちていたジャージをハンガーにかけてから振り返る。
そこには、ヒラヒラと手に何か紙を持った仁王君が立っていた。
「今週、デートとかどうじゃ?」
『だが断…え?』
仁王君から発されたあまりにも不釣り合いな言葉。
…え、デートってあのリア充が街を練り歩くデートのことですよね?
『どしたん急に。』
「実はクラスの女子からコレを貰ってのう。」
そういって渡されたのは2枚のチケット。
ペア優待券、と書かれたソレは裏に小さい地図や料金表が書かれていた。
『…カラオケ?』
「おう。」
『いやおうじゃないよ。なぜ私誘ったし。』
ぺいっと仁王君に突き返せば、肩を竦める仁王君。
「捨てるのも勿体ないじゃろ?」
意外と庶民派なのね。
あ いや意外とでもないのか…?
でもそれなら尚更私なんかを誘うより柳生君とかと行けばいいんじゃないか。
もしくは別の女の子とか。
…というか、女の子ってカラオケ好きな子多いんじゃないの?
『なんでソレ貰ったの?』
「よくわからんが…男女限定なんだけど、相手いないから仁王君にあげる☆…と。」
ご丁寧にその女子の声真似までしてくれた仁王君。
なんでそんなかわいい声だせるの。どこからだしてるの流石詐欺師…
って。
『…もしかしてその子仁王君に誘って貰いたかったんじゃ…』
「ピヨッ。」
『絶対行かない私。』
即答してやった。
だって考えただけでも恐ろしいじゃないか。
乙女の勇気の結晶を私がぶち壊すなんてことしたくない。
「だって、名無しくらいしか相手が思いつかんのじゃ。」
『いっぱいいるだろーがよ!』
厭味かお前は。募集の紙でも貼っておけば女子ホイホイだよ。戦争が起きるよ。
「その戦争が起きる前にお前さんで済まそうと思っての。」
『いや私を使うな。』
ギャーギャーと仁王君と言い合いをしていたらトントンと肩を叩かれた。
振り向けば真っ赤な髪が。
「なんの話だよぃ?」
『ブン太君、仁王君がカラオケ行こうって。』
「…連れないのう。」
「は?なんで仁王と2人だけで行かなきゃなんだよぃ。あ、名無しと3人か?」
『うわ絶対嫌だなーその面子。』
戦争で真っ先に死ぬじゃん私。
「カラオケ?」
『わ、幸村君。』
またもその場にひょっこりと新しい人物…いや天使が現れた。
いつの間にか私の手に握られているペア優待券をまじまじと見ている。
「へぇ。仁王と名無しでデートかー。」
『違うから本当にやめて本当に。』
「名無し…顔が必死すぎてなんか悲しくなってきたナリ…」
この際仁王君の存在は無視しよう。
だって今の幸村君の発言がフェンス外に聞こえていたら大変だもの。穏やかじゃない。
「別にいいと思うけど、だったら俺もついていこうかな。」
『は?』
あたふたしていると、相変わらずの笑顔でよくわからない発言をした幸村君。
…え、何今の聞き間違い?
『えーと…』
「じゃあ俺もー。」
『…え?』
言葉に詰まっていると、ブン太君がそれに便乗するように手を上げた。
…ちょ、待てついていくってなんで私が行くことは決定事項なんだ。