OKADA'scafe
□Piano
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准一の部屋にある電子ピアノ。
たまに気が向いたら、好きな曲を弾いている。
今日はその日らしい。
【piano】
日頃はリクエストしてもなかなか聴けないピアノ。
准一は本棚から適当に楽譜を選ぶと、指慣らしにスケールやカデンツで様子をみる。
あこがこっそり見ているのを分かってるように、『あかんなぁ…鈍ってるわ。たまには動かさななぁ』
大きな独り言を呟いた。
少し微笑むと、楽譜をめくり有名なクラシックの旋律を奏で始める。
准一は言葉の割に余裕のある調。
長い指がピアノの上を滑るように動き、腕と肩の筋肉が同調するようにリズムに乗る。
そして、部屋には心地い調が踊るように広がる。
『どうやった?』
「えっ?!」
曲が終わって、聞き惚れているところに不意な質問。
「准のピアノ…やっぱり、いいよね。
なんかこう…聴いてて安心するっていうか、包まれてるっていうか。
私もそんな風に弾けたらいいんだけどね…。」
あこが言った何気ない一言に准一は『やってみる?』
なんて言い出す。
「いや…。無理でしょ?」
『俺が教えてあげるよ?』
「いやいや…無理でしょ?」
『無理じゃないよ。』
「いくら准が手取り足取り教えてくれても、絶対無理。」
『手取り足取り?』
意地悪そうに唇の端を上げて笑う准一