OKADA'scafe
□bestfriends
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時の流れを目にすることはなかなか難しいけど
時が過ぎたことを感じることは暫しある。
ピンク色一色だった桜の木が、眩しい緑に移ったりしたのを見たり
昔の写真が本棚の間から出てきたのを見つけた時とか……
ただ、何も変わらない事だってある。
色褪せない想い出と共に
深いところで
大切にしているもの
【best friends】
学生の頃
毎日適度な勉強と、精一杯の社会勉強に明け暮れていた。
少しずつ大人に近づくにつれて
思想や哲学に拘りが出てきて、将来の夢も現実味を帯びてくる。
こんな大人になるんだとか、こうはなりたくないとか
好き勝手言っては試行錯誤を繰り返した。
時間をかけて悩んで出した答えには正解がないことだって多くて
でもその時だからこそ、そんな贅沢な時間の使い方も許された。
喫茶店のたった一杯の珈琲で、何時間も過ごしたり
訳もなく服のまま海で泳いでみたり
寒い夜なのに、公園の片隅で語り明かしたり……
そして、その時に一緒になって悩んでくれた友だちが財産になった。
社会に放り出された僕たちは、頻りにその古巣に集って
まだ飛び立てない雛の様に過ごした。
月日が経つにつれて
ひとり
またひとりと旅立ち……
仲良くしていた学生時代のグループは、遂には自分と岡田准一、高橋一生の3人だけになってしまった。
2000年 冬
二十歳の記念にと、少し背伸びしたレストランを予約した。
しかし誕生日の主役である准一も、食事にでも行こうと言い出した一生もまだ来ない。
飲み馴れないシャンパンは、とっくに空になっているし、ひとりでこんな場所で待つことになるなんて
あこは溜め息と共に、言葉が漏れた。
「誕生日おめでとう……か……」
二十歳に早くなりたかったはずなのに、なってしまえば途端に十代が愛しくなる。
自分の人生を考えていると、不安ばかりが頭を過った。
今の自分は活躍する二人にどんどん置いていかれている気になってしまう。
「あーあ……なにやってるんだろ」
そう呟いていると、急いで店内を闊歩する准一の姿が見えた。
『ごめん、遅くなった……』
帽子を目深に被った准一は、あこの向かいに座ると疲れた様子で、背中を丸める。
最近はドラマも始まったからか、准一は忙しそうにしていた。
『本当、ごめん……』
まさか一生まで遅れているとは思わなかったのだろう。
本当に申し訳なさそうに、准一は帽子を取った。
「大丈夫、まだ12時越えてないし。」
こんなところで愚痴っても、誕生日が台無しになるだけ。
『で、一生は? 』
「遅くなるって……」
『そっか……』
「舞台、始まるもんね」
『そうなんや……』
「知らないの?」
『んー……』
「この間言ってた」
『へぇ……』
余り興味が無いのか、准一はメニューに一通り目を通しながら軽い返事を返した。