OKADA'scafe
□彼女の彼
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友達が彼氏と別れた。
友達が云うには、最低最悪の彼氏だったそうだ。
とても自己中心だと言っていた。
忙しいからじゃないの?と、言っても
「逢いたい時も逢えないし、メールすらよこさなかったり。
久しぶりに逢えたと思ったら、家から一歩も出ないし。
全く喋らなくても平気なくせに、身体は動かさないと寝れないとか変でしょ?」
と、興奮した様子で返された。
しかし……
「でもさぁ…。でもね…一緒の時は満たされてた気がする…。
今まで、他の男には感じないオーラって云うのかな、自分のモノにはならないけどみたいな感じ?…付き合うのは正直しんどいけど、此れからも彼のことは応援はしたいかな」
彼女の様子を見て、幾ら素敵な人でも私は好きにならないし…
なっても付き合いたく無いと、ハッキリとあこは自覚した。
まだ興奮冷めやらぬ彼女に対して、あこは慰めの言葉を探す。
「仕方ないよ…岡田准一だもん。」
果たしてこの言葉が適切かどうかは分からないけど、彼女は納得したのか飲み掛けのグラスに口を付けて「そうよね。」と、自分に言い聞かせた。
【彼女の彼】
週末の繁華街夜も少し更けてくると、大人の時間になってくる。
急に会社の後輩からの酒の誘いに、渋々あこは待ち合わせ場所のbarへやって来た。
もう自宅が目と鼻の先だったのに、呼び出されていい迷惑だと思いながらも、彼女の落胆した声にあこは出向かざるを得なくなった。
「はぁ…」
店に着くとカウンターはいっぱいで、奥の席に通された。
待ち合わせには向かないが、はっきりいってこんな場所に一人で居るのは得意じゃないあこは、目立たない席でまだいいかなと思った。
携帯を開くが、後輩からの連絡は未だ無い。
一杯目のグラスを少しずつ楽しみながら、あこは待つことにした。
人気店だからか、店内はほぼ満席でぽっかり空いたあこの隣の席にも“reserve”の札が立てられていた。
「……」
お洒落なインテリアとランプの灯りが優しい店は、カップルも多かった。
こんな店で彼氏とゆっくり出来たら、さぞ素敵だろう。しかし残念ながらあこにはその彼氏が居ない。
別れて直ぐは、寂しかったりもしたが、彼氏が居なければ居ないでやっていけたりするのが、二十歳そこいらとの違いなのかと思う。
一杯目が空になりかけた頃、後輩より先に隣の客が席に着いた。
その男性客も、此処は初めてなのか馴れない様子で辺りを見ていた。
あこも気になり横を見ると、視線が合い男性が岡田准一だと気付いた。
「あ…」
『……』
つい言葉が溢れた。
以前友達が付き合っていた頃、一度紹介された事があったが、きっと自分の事なんて覚えて無いだろうと思い、あこは軽く会釈だけする。
『……お久しぶり…ですよね?』
すると岡田は帽子を脱いで丁寧に頭を下げた。
岡田が覚えていた事に、あこは驚いた表情で答えた。
「は……い。お久しぶりです。」