OKADA'scafe
□calling 3
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会社から目と鼻の先のカフェ。
ランチの時間はよくオープンカフェになっていて、あこはよく利用していた。
秋も深まってくると、街路樹が色づき始めて目にも舌にも美味しくなる。
そのカフェにあこは最近、専ら夕食の時間帯に訪れる事が多くなっていた。
理由の一つに忙しいと言う事もあるが、それ以外に最近は昼に自分で作った手製の弁当を持ってくるようになりここの店へランチで来なくなったからと云うこともある。
この店のパスタはたまに無償に食べたくなる味で、あこは予定が空くとこの店へよく来ていた。
本当なら今日は准一と久々に食事の予定だったが、最近は准一の仕事がとても忙しく…
折角予定を空けていても、こうして一人になってしまう事も珍しくなかった。
「やっぱり此処のカルボナーラは美味しいっ…」
あこは舌鼓しながら窓側の席で少し遅めの夕食をつつき、携帯を触っているとコンコンと窓をノックする音が聞こえた。
あこはなんとなく顔を上げると、窓の外には会社の後輩の佐藤の姿があった。
「佐藤……」
佐藤は目が合うと入口に回ってあこのテーブルについて、向かいに座りウエイトレスに注文を済ませた。
『久しぶりっすね…仲本さん。』
「……うん。元気?全然会わないから、どうしてるのかと思った…。」
『俺、三日前までイギリスだったんですよ。』
「えっ…イギリスって……まさか、あのプロジェクトの立ち上げに入ってたの!?」
『……まぁ…(笑)』
「凄いじゃん…いいなぁ…イギリスかぁ…。どうだった?」
『まぁまぁ…でした。なんか、右も左も分かんなくて…(笑)
それより、どうしたんですか?珍しいですよね、一人飯ですか?』
「あ…まぁね…。予定が無くなって、お腹空いたなぁって思ったらパスタが食べたくなって……で、此処にいるわけ。」
『そうなんですか…。』
あこの表情を見て佐藤は何か言いかけるが、遠慮して口籠りテーブルの上の水を飲んで誤魔化した。
「何?言いなさいよ…(笑)」
言いにくそうにしながらも、佐藤はあこをまっすぐ見ると口を開いた。
『あの………まだあの身勝手な彼氏に振り回されてるんですか?』
「身勝手…?」
『そうですよ…自分の逢いたい時だけ仲本さんに連絡してくるクセに、妙に束縛したがる彼氏です。』
「あれ…私、そんな風に言ってたっけ(笑)?」
『言われなくても分かりますよ…。
それとも仲本さんって振り回されるの好きなんですか?』
「そんな訳無いでしょ(笑)」
『そうなんですか?……意外にその素質あると思いますよ。』
佐藤は運ばれてきたパスタにフォークを絡めると、嬉そうに笑いながらあこを見つめた。
【Calling3】
食事の流れから、もう一軒佐藤はあこを誘う。
以前なら、口が酸っぱくなるほど准一に止められていたあこだったが、最近はその話題すら出なくなってきた。
久しぶりに話をしたいと言われ、この後の予定も全く無いあこは、佐藤に誘われるがまま次の店へ足を運んだ。
お洒落な夜景の見えるbar
確かこの間オープンしたばかりで、人気の店だと何かの雑誌で読んだ覚えがある。
あこは店に入ると、嬉しそうに辺りを見渡す。
その様子に佐藤は満足気に微笑んだ。
『気に入って貰えました?』
「スッゴいお洒落なお店よね…///」
久しぶりにこう云う店に入ったあこは、少し声が上ずっていた。
『あれ?……彼氏さんと来たりしないんですか?』
「あ…うん………。」
最近は准一とお洒落なお店どころか、外食もショッピングでさえも行けていない。
インドアだからというよりは、パパラッチやTwitter等の方に敏感になっていて、どうしても“一緒に”と云うのは難しくなっていた。