OKADA'scafe


□ヨロコビノウタ
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どんなにうまくいっているカップルにも倦怠期はある。

仕事やタイミングが合わなかったり
些細な事が行き違えたり…
理由は様々。

喧嘩している訳じゃないけど、お互いが何となく感じる不快感。


それを倦怠期と感じていない場合は別として、二人がその試練をどう乗り切っていくかで今後が決まる事も珍しくない。







【ヨロコビノウタ】








冷めた珈琲が美味しく無いのは、酸化するからだと准一は言う。



テーブルに置かれたままの准一のマグカップには、飲み残しの珈琲がまだ入ったままだった。
其所にカップがあることも、准一は忘れているようにPCの画面に没頭していた。



「…もう飲まない?」



『そやな…』



准一のどちらともとれる曖昧な態度にあこは溜め息をついた。
久しぶりの休みだと云うのに、准一は新しい仕事が決まったらしく、その資料を集めるので忙しそうにしていた。



「准…」



名前を呼んでいるのに、返事すらしない准一にはあこも慣れていた。
准一は何かに没頭すると、それしか見えなくなる。
それを知っていて、あこはもう一度名前を呼んだ。




「ねぇ…准?」


『……ん?』


「お願いがあるんだけど…」


『なに?』


「久しぶりに何処かに出ない?」


『え?』


「だから…ドライブとか、あ…プラネタリウムとかは?」


『ん…そやな……』


「そやなって……」


またその返事にあこは思わず顔をしかめた。
都合よく准一は画面に夢中の様で、あこの表情には気づいていない。
あこは気を取り直して、もう一度准一に声を掛けた。



「ね、准…久しぶりにピアノ聴きたい。」


『は?』


「准のピアノ、其くらいならいいでしょ?」



突然なあこの我儘に准一は少し口角を上げた。



『え…?』


「ね、准いいでしょ?」


『ん…あぁ…、………あれ?此処に置いてたマグカップは?』


「もう飲まないのかと思って、下げちゃった…」


『あぁ…そうか…』


今度はお決まりの“そやな”の言葉も無く、うまくはぐらかされてしまった。
あこは何となく感じる准一との距離に不協和音を感じる。その微妙な空気に胸がチクンとした。
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