創作場(花朔)

□聖夜
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「だはははは、ひっひっひ・・・。やべー、はらいてぇ。」蛮が大笑いする。
「くっ。くじとはいえ、こんな恰好をしなければならないとは・・・。無念だ。」
馬鹿にされた十兵衛は悔しく思いながらも反論できない。190cmの長身でその信念の強さからサムライと呼ばれることもある十兵衛だが、トナカイの着ぐるみを着ている現在は強さの欠片も感じられない。
「自分のことを棚に上げてよく言えますね、そんなこと。君も十分おかしな格好ですよ?」
花月が笑いながら言う。十兵衛のことを笑っていた蛮だったが、実は蛮自身もプレゼントの包みの着ぐるみを着ていたのだった。
「そうよ、あんた達二人ってほんとに運ないっていうか・・・。いつもお笑い担当よね。」
卑弥呼は隣にいる銀次を見て言う。銀次はサンタの使うプレゼント用の袋の着ぐるみを着ていた。
「うるせー。お笑い担当はそこにいるドリフだろ!?」
蛮がきんきらのタキシードに大きな蝶ネクタイをつけた笑師を指す。
「ドリフってわいのことでっか?褒めてもろておおきに(*^^)v」
「だーっ、褒めてねぇ!!それとそこのホスト!!てめーは妙に決まりすぎなんだよ!!」
蛮は自分が変な格好をしているために黒のタキシードに胸には薔薇の花、という似合いすぎている格好の鏡に八つ当たりした。
「最高の褒め言葉として受け取っておくよvv」鏡は余裕の笑顔を見せた。
「それにしてもマクベスさんと花月さんはよく似合ってますね!!」夏美が言う。
マクベスは毛糸の帽子にマフラーを巻き、手袋をつけて今まさに雪だるまを作ってました!という少年の格好、そして花月は白の長いローブのようなものを着て、まるで神話に出てくる神のような格好をしていた。みんなが男性陣の衣装で盛り上がっていた時、
「みなさん、パウンドケーキが焼けました。まぁ、なんだか楽しそうですね。」
歌うような声とふわりとした笑顔を伴って朔羅が部屋に入ってきた。
「朔羅ハン、わいの衣装どうでっか?」笑師がワクワクしながら言う。
「とても似合っていますよ。笑師は華やかな服が似合いますね。」優しく笑う朔羅。
「笑師ばっかりずるいなぁ。俺はどうかな、朔羅?」鏡も朔羅に尋ねる。
「素敵です。鏡はいつも白のスーツですから、黒でいつもと違うと何やらドキリとしますね。」
朔羅が素直な意見を述べる。朔羅は思ったことを言っただけだったが、それを聞いた他の男性陣は心底悔しく思った。というのもここにいる男性陣はみんな朔羅のことが好きで、ドキリとしたという最高の称賛の言葉を貰えた鏡が羨ましくて仕方なかったのだ。
「朔羅っ、僕、僕はどう?」マクベスが珍しく取り乱す。
「さ、朔羅。俺の衣装の意見も述べてほしいのだが・・・」
俊樹は出来る限り平静を装うとしている。
「朔羅〜!俺のはどう思う?」眼を輝かせて銀次が言う。
「待って下さい。1人ずつ順番に・・・」
言いかけた朔羅の眼に隅の方で落ち込んでいる十兵衛の姿が映った。十兵衛は真面目な性格ゆえに先程蛮にからかわれたことを気にしていたのだった。
「すみません、少し待っていてもらえますか?」
意見を求める男性陣にそう言って朔羅は十兵衛の傍に近寄った。
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