創作場(花朔)

□女神と堕天使・6 〜愛するということ、君が教えてくれたこと〜
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『とにかく、校内1周だ。客が集まるか集まらないかはこの際どうでもいい。必要なのは周ってきたっていうその事実だからな!』
これは数分前に花月が自分を納得させるように言った言葉である。
とりあえず、役目を果たせばこの服を脱げる、そう思った2人はそれを信じて学校内を周りはじめた。
「わぁ、この指輪、可愛いですね❤」
「こっちはフリーマーケットやってますよっ!」
「あ、あのクレープ美味しそうですね、花月君っ^^」
1人できゃあきゃあ騒ぐ朔羅。はたから見ると、一般客(服装はともかくとして)にしか見えない。
“ったく、コイツ、なんで俺たちがここにいるのか本当に分かってんのか?”
内心呆れる。しかし、朔羅の行動よりももっと深刻な問題があるのだ。
“やっぱ、相当目立ってんな…。今のヤツなんか振り向いて見返しやがった。”
男子校でゴスロリの衣装を着ている2人は完全に注目の的となっていた。蛮の思惑通り、多数の女子が「可愛い〜❤」などと言って食いついてくる。
携帯で写メったり、一緒に写真を撮ってほしいと言われたりするのはもう慣れっこになっていた。が、男どもの騒ぎ方はその比でない。
他校の連中はもちろん、この学園の生徒、さらには教師たちまでもが自分たちのことを惚けた目で見ている。
握手などはまだカワイイものだ。さっきのヤツは写真を撮る際に腰に手を回そうとしてきた。思いっきりその手をつねってやったが。
そんなこんなで花月のイライラは頂点にまで達しようとしていた。女装しているということも確実にその原因の1つなのだが、それより大きな原因は朔羅だった。
周りの男がろくでもない下心満々の目で彼女を見ているというのに、それにちっとも気付いていない。それどころか、求められれば握手にも写真にも快く応じている。
調子に乗った男どもが自分の名前を“さん”付けで呼んでほしいと言えば、「いらっしゃいませ、○○さん」などと、
(本人は意識していないのだろうが)ますます男がつけ上がるような行動を平気でとっているのだ。
本人がそんななので、朔羅を取り囲む男の数はネズミ算式に増えていき、今では彼女がどこにいるのかさえ分からないほどになっていた。さながら人気アイドルの学校訪問である。
加えて、花月が“俺に近づくな”オーラをじわじわと出しているがために、男たちは必然的にほわほわとした雰囲気を醸し出している朔羅の方へ集まっているのだった。
最初はイライラしながらもその様子を黙って見ていた花月だったが、調子づいた男たちが朔羅にベタベタとボディタッチを始めるとさすがの彼も限界を迎える。
朔羅を囲んでいる人垣をかき分けて、彼女に近づく。
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