創作場(花朔)

□女神と堕天使・1〜翼をもがれた天使〜
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「では筧先生、簡単に自己紹介をお願いできるかの。」
「はいっ!」
桜舞う4月、筧朔羅は新任教師としてこのGB学園高等部に赴任してきた。初めての学校、しかも男子校ということで朔羅は大いに緊張していた。
「筧朔羅です。え…と。この学園が初めての赴任校なので緊張していますが、生徒たちとともに成長したいと思っています。ご指導のほどよろしくお願いします。」
そう言って朔羅は深々と頭を下げる。朔羅に自己紹介を促したGB学園の理事長、螺堂源水は娘を見るような優しい目でそれを見ていた。
同僚の教師たちの反応はというと、女性教師たちの間には“よろしくね”と友好的なグループと朔羅の若さ・美しさに嫉妬しているグループの二つが早くもできている。
そして男性教師たちはほぼ全員が朔羅の美しさに見惚れている状態であった。


「新任の先生の紹介も終わったところで、今年の担当クラスの発表をしようと思うのじゃが。」
源水翁が静かに切り出す。
その一言でそれまでザワザワしていた職員室が一気に静寂に包まれた。
担当クラスの発表は教師たちにとってビッグイベントなのである。
「今年は何年になるだろうな。」
「あのクラス以外ならどこでもいいさ…」
「1年間もあのクラスなんて考えるだけで恐ろしいものね。」
意味深な会話をする教師たち。
そんな会話を尻目に次々と担当クラスが発表されていく。
朔羅はどのクラスになるのかと期待半分、不安半分で自分の名前が呼ばれるのを待っていた。
「1−B、鷲尾先生。」「はい。(よかった…)」
「2−A、西川先生。」「了解です。(危ない危ない)」
「3−D」朔羅にはごくっ。と唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
「筧先生。」
「はっ、はい!!」
瞬間、その場の全員が朔羅の方を振り向く。
「お願いできるかね?」
「はいっ!もちろんですっ!」元気よく答える朔羅。担任を任されたことが嬉しくてたまらないらしい。犬が尻尾を振るときのように目をキラキラ輝かせている。
「ちょ、ちょっと待ってください、理事長!」そんな中一人の教師が源水翁に詰め寄る。
「何ですかな、森田先生。」落ち着いてそれに答える。
「赴任1年目で3−Dは少し、その…大変かと。!いえ、あのクラスが悪いと言っているわけではないんですよ?ただ、彼女は新任でしかも女性なわけですし…。」
心配そうに朔羅を見る。
「君は優しい男じゃの。朔羅先生を本気で心配しておる。しかし、朔羅先生なら大丈夫じゃ。それに彼らも根っからの悪人ではないからの。」にっこりと対応する。
それを聞くと源水翁に詰め寄った教師は渋々引きさがった。
「そういうことじゃ!先生方、今年1年またよろしく頼むぞ!」
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