創作場(花朔)

□女神と堕天使・6 〜愛するということ、君が教えてくれたこと〜
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「あ、花月く…」
花月の姿を見た朔羅は声をかけるが、それには答えず、その代わりに彼女の細い手首をぎゅっと掴んで強引に引っ張って行く。朔羅にはわけが分からない。
「あっ、あの、花月君…?」
「・・・・・」
取り残された人々を気遣うようにちらちらと後ろを振り返りながらも転ばないように何とか花月の歩調についていく。花月の足は3−Dの教室の前でやっと止まった。
「ぁ、あの、花月君…、どうしたんですか…?」
「…あれだけ宣伝すれば充分だろ。もう俺はこんな服脱ぎたいんだよ。」
“朔羅が他の男にベタベタされてるのが嫌だった”などとは口が裂けても言えるはずがなく、それを悟られないようにわざと冷たい口調で話す。
「これで客もそこそこ入ってるはず・・・」そう言って教室のドアを開く。
その瞬間。教室中からわぁっと歓声が上がり、2人は瞬く間に人の波に飲まれた。
教室は人、人、人、人…。2人が想像していた以上に宣伝効果は大きかったようだ。狭い教室にははちきれんばかりに人がつまっている。
「っ!?なっ、これ何…」
「あっ、あのぉ、みなさん、一体、これは…(汗)」
「大変ながらくお待たせしましたっ!今回の大目玉っ、2人の美女が今、いまっ、ここ、3−Dに帰ってまいりましたぁ〜!!さぁ、思う存分コミュニケーションしてくださいませぇ〜!!!!」
蛮が丸めた画用紙をバンバンと叩く。まるでバナナのたたき売りである。
“マジかよ・・・”
そう思いながら、黒板を何とはなしにチラリと見る花月。それは本当に偶然だった。
【握手:200円  サイン:300円  写真撮影:400円  ハグ:1000円】
“はぁ〜っ、どうせまた美堂の仕業だろ。ホント抜け目ねぇって言うか、金に意地汚いっつうか。こんなんボロ儲けじゃねぇかよ。しかもハグ1000円って高…って、えぇ!?”
ごしごしと目をこする。今のは目の錯覚だ、幻想だ、そうに決まってる!!
花月はもう一度ゆっくりと黒板を見てみる。さっき見たことが夢であることを願って。
しかし、花月の願い空しく、黒板にははっきりくっきりと書かれていた。【ハグ:1000円】と。
完全にキレた花月は事を起こした張本人であろう蛮のもとへ足を踏み鳴らす勢いで近づいて行った。
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