創作場(花朔)

□女神と堕天使・4〜闇さえ包む君の腕〜
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「あの野郎…」
「さっきから大人しかったのはアイツを逃がすためだったのか。ナメたマネしやがってっ!!」銀次の後を追えないと分かった7人の怒りは残された花月に向けられた。
「残念だったなぁ。弱いと罵ってたヤツにさえ逃げられてよ?」
これでもかというくらいふてぶてしく笑ってみせる。銀次をこの場から逃がしたことで完全に自分の役割は果たした。これから何が起こるかなど分かりすぎるくらいだが、花月に後悔はなかった。それどころか、無傷とは言えないまでも何とかここから銀次を抜け出させることができて安堵しているくらいだった。自分がどうなろうが、仲間は守りたかった。ただ、それだけだ。
「こンの野郎…。ぶっ殺してやるっ!」
半身を掴んでいた手を離され、床に崩れ落ちる。自分で立っている力はもうほとんど残っていなかった。
倒れ込んだ花月を7人で一斉に蹴り出す。腹、背中、足…。どこを蹴られても痛んだが、格別だったのはやはりさっきやってしまった左腕だった。
少し触れられただけでビリビリと痛みが走るのに、蹴り上げられた日にはさすがの花月も叫びをこらえることができなかった。あまりの痛みに意識が遠のく。
“やっば…。目ぇかすんできた…。やっぱ左腕やられたのが痛かったかな・・・”
まわらない頭でぼんやりと考える。黒学のヤツらが罵倒を浴びせているようだが、それさえも遠くに聞こえた。
こんなヤツらに負けたのかと思うと自分自身をぶっ飛ばしたくなったが、そうする体力もない。ただ黒学の連中のされるがままになるしかない自分に無性に腹が立った。
“3−Dのアタマとかあのセンコーには大口叩いたけど、俺はそんな器じゃなかったのかもな・・・”ゆっくりと落ちていくような思考の中でそんなことを考えた。
「風鳥院君っ?どこにいるんですかっ!?」
“あぁ、ついに幻聴まで聞こえだしたか。あのセンコーの声が聞こえるなんて、末期だな。でも、結構柔らかい声してたんだな…最後に聞く音がこれなら、まぁ、よしとするか・・・”
「!あなたたち、何してるんですかっ!?ふ、風鳥院君っ!!」
幻聴がどんどん大きくなっていく。
自分のことを囲んでいた黒学の連中をかき分けて誰かが近づいてくる。
“黒学のヤツら、何か騒いでやがる。化けもんでも出たのかよ。俺は何だか知らねぇけどさっきからすげーあったかいのによ。ハハ…マジで天国来ちまったか…?”
「風鳥院君っ!酷い、こんな…」
花月は肌に感じる温かさと柔らかさに気付き、うっすらと目を開けてみる。眼前で長い亜麻色の髪が揺れていた。大きな瞳には涙が光っている。
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