創作場(花朔)

□女神と堕天使・4〜闇さえ包む君の腕〜
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「銀次クン、来ないねぇ。」
「花月もな。」
3−Dの教室では5日も学校に来ない二人のことを心配していた。花月は今までも学校に毎日来ていたわけではなく、それこそ来たいとき(気分に合わせて)来るという程度にしか学校というものを考えていないので心配ではあるが、今は置いておく。問題は銀次である。銀次は高校に入ってまだ欠席をしたことがない、というくらいの学校好きだ。その銀次が5日も何の連絡もなく休んでいるということはよほど自分たちの行為がショックだったに違いない。
「ちーっと、やりすぎた、か…?」蛮が頭をかきながらぽつりと零す。
今さらと言えば確かに今さらだが、それでも後悔の念がたたない。仲間でいる、ということを一番に望んでいた銀次をその仲間から外す。
それはどういうことだったのか、今になってやっと分かってきた。自分たちが以下に幼稚だったか。銀次は自分たちの大切な仲間だったということに今頃になって気付くなど。
教室全体に暗いムードが漂う。
そのときだった。
ガラッ
後方のドアが何の前触れもなく開く。
「銀次!?」
自然、全員の目がたった今クラスに飛び込んできた人物に集まる。
しかし、それは銀次ではなかった。走ってきたのか、ぜいぜいと息を切らしながらその場に座り込むクラスメイト。
「そんなに息を切らして、何かあったのか?」
「ただの遅刻、とかじゃないだろーね?」俊樹とマクベスが尋ねる。
「みんな、聞いてくれっ!大変なんだよ!俺、今日ちょっと用事あってよ、いつもとは違う裏道から学校来たんだよ。
そしたら俺たちのことやたら敵視してる黒学のヤツらがいてよ。んで、6,7人で誰かを囲んでたんだ。
そこの位置からじゃよく見えなかったんだけど、頭掴まれてて、その、髪の色がキレーな金髪だったんだよ…。俺、もしかしてって思って…!」
切羽詰まったように話す。
「おい、それはまさか…」
「銀次のヤツっ…。何捕まってんだよっ!!」
「黒学のヤツら、どこ行ったか分かりまっか!?」
「東町の方に行ったことだけは分かったけど…。俺、ヤバいと思ってすぐこっち来たから…」申し訳なさそうに頭を垂れる。
「すぐに探さなきゃね。黒学のヤツら、花月クンがいないことをいいことに、何するか、分かったもんじゃないよ。」
「で、でもよ、花月は銀次に関わんなって言ってたじゃねぇか。そりゃ、俺だって助けに行きてぇよ。でもよ、花月がいなくて黒学の連中に勝てんのかよ?」
その一言でムードが一気に盛り下がる。確かに彼の言うことは正論だ。黒学は隣町最大の不良校で、何かにつけては3−Dの生徒たちに因縁をつけてきていた。
喧嘩の強さは互角かややこちらの方が上回っているが、それは花月の存在が大きい。3−Dの生徒たちは一人一人強いが、花月がいることで安心感のようなものがあるのも事実だった。
ざわつく教室。
すぐ横の廊下でカバンがドサリと落ちた音など誰にも聞こえるはずがなかった。
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