眠れない。 何があったわけでも、昼寝したわけでもないのに。 眠れない。 「…はあ。」 とりあえずベッドに突っ伏してみても眠気は訪れず。 目を閉じるとやっぱり浮かぶのは彼女だった。 ミクさん。 好きだ。 どうしようもなく、好きだ。 俺を呼ぶその甘い声とか、揺れる髪の毛とか、真っすぐな歌声とか、笑顔も泣き顔も。 彼女の空気そのものが好きだ。 (レンくん!あのね、私ね。) 内緒話をするように彼女が俺の耳元で囁く。 あの距離で、永遠に時が止まれば良かったのに。 告げられた言葉は、俺の世界を一瞬で壊した。 可愛いミクさんで溢れていた、温かな感情が、真っ黒に汚れていく。 こんなの、嫌だ。 どうして人は恋をするんだろう。 皆友達で、普通の大好きでいれば良いのに。 特別なんて作らないで、特別になりたいとも思わないように、そう作られてれば良かったのに。 ミクさんがあいつと特別な関係を作るなら、世界に恋心なんて存在しなくても良かったのに。 今のままの距離でいられるなら、俺は別にこの気持ちをなくしたって、構わないのに。 「………っ。」 じわりじわりと滲んでいく視界。 ああ情けない。かっこわるい、俺。 でもだめなんだ。 俺はまだまだ子供で、どうすれば良いか分からなくて。 だから、どうしようもできない。 「ミ、クさっ…ん、ミク、さん…!」 泣くな。泣くな。 泣くなんて、それこそ子供の証拠じゃないか。 泣いたって何にもならないじゃないか。 止まれ、止まれ。 こんな気持ちが欲しかったんじゃないのに。 ただ、彼女が。笑う彼女が、俺の頭を優しく撫でる彼女が。 好きだっただけなのに。 好きで、大好きで、その気持ちはなんだかとても温かかったから。 こんな気持ちが幸せだったから、俺は彼女に恋をして良かったと思ったんだ。 なのに。 「…っ、ひっく、うう…」 どうしようもないんだほんと。 届かないと分かって、その途端恋心は汚れて。 そんな自分が悔しくて。 でもやっぱり気持ちが消せなくて。 結局俺はミクさんが。 好きなんだ。 どうしようもなく。 好きで、好きで、やめれなくて。 だからこんなに苦しいんだ。 「ミ…ク、さっん、」 女々しい自分が大嫌いだ。 あいつも大嫌いだ。 恋心なんて、大嫌いだ。というのは嘘かもしれない、分からない。 …もういいや泣いてしまおう。 今だけは。 泣い ても、いいですか。 ミクさんはとても優しいから。 明日、赤くなった目を心配してくれるかな? そんなことばかり考えるずるい男なんです、俺は。 だからお願い。 もっとこっちを見て。 届け、届け。 届いて。 彼女が離れてしまうなら、世界中の大好きが平等な友愛に満ちてしまえなんて思うのに。 そんな奇跡はおきないから。 結局俺は、この気持ちが届いて欲しいと願ってしまうんだ。 (ごめんなさい、大好きです。) |