かぷ

□夜に願いを
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眠れない。
何があったわけでも、昼寝したわけでもないのに。
眠れない。


「…はあ。」


とりあえずベッドに突っ伏してみても眠気は訪れず。
目を閉じるとやっぱり浮かぶのは彼女だった。


ミクさん。


好きだ。
どうしようもなく、好きだ。
俺を呼ぶその甘い声とか、揺れる髪の毛とか、真っすぐな歌声とか、笑顔も泣き顔も。
彼女の空気そのものが好きだ。


(レンくん!あのね、私ね。)


内緒話をするように彼女が俺の耳元で囁く。
あの距離で、永遠に時が止まれば良かったのに。
告げられた言葉は、俺の世界を一瞬で壊した。
可愛いミクさんで溢れていた、温かな感情が、真っ黒に汚れていく。

こんなの、嫌だ。

どうして人は恋をするんだろう。
皆友達で、普通の大好きでいれば良いのに。
特別なんて作らないで、特別になりたいとも思わないように、そう作られてれば良かったのに。
ミクさんがあいつと特別な関係を作るなら、世界に恋心なんて存在しなくても良かったのに。

今のままの距離でいられるなら、俺は別にこの気持ちをなくしたって、構わないのに。


「………っ。」


じわりじわりと滲んでいく視界。
ああ情けない。かっこわるい、俺。
でもだめなんだ。
俺はまだまだ子供で、どうすれば良いか分からなくて。

だから、どうしようもできない。


「ミ、クさっ…ん、ミク、さん…!」


泣くな。泣くな。
泣くなんて、それこそ子供の証拠じゃないか。
泣いたって何にもならないじゃないか。

止まれ、止まれ。
こんな気持ちが欲しかったんじゃないのに。

ただ、彼女が。笑う彼女が、俺の頭を優しく撫でる彼女が。
好きだっただけなのに。
好きで、大好きで、その気持ちはなんだかとても温かかったから。
こんな気持ちが幸せだったから、俺は彼女に恋をして良かったと思ったんだ。

なのに。


「…っ、ひっく、うう…」


どうしようもないんだほんと。

届かないと分かって、その途端恋心は汚れて。
そんな自分が悔しくて。
でもやっぱり気持ちが消せなくて。
結局俺はミクさんが。

好きなんだ。
どうしようもなく。
好きで、好きで、やめれなくて。
だからこんなに苦しいんだ。


「ミ…ク、さっん、」


女々しい自分が大嫌いだ。
あいつも大嫌いだ。
恋心なんて、大嫌いだ。というのは嘘かもしれない、分からない。

…もういいや泣いてしまおう。

今だけは。
泣い
ても、いいですか。
ミクさんはとても優しいから。
明日、赤くなった目を心配してくれるかな?
そんなことばかり考えるずるい男なんです、俺は。

だからお願い。
もっとこっちを見て。

届け、届け。
届いて。

彼女が離れてしまうなら、世界中の大好きが平等な友愛に満ちてしまえなんて思うのに。
そんな奇跡はおきないから。
結局俺は、この気持ちが届いて欲しいと願ってしまうんだ。


(ごめんなさい、大好きです。)



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