ばか。 ばかばかばか! 「レンの馬鹿!」 「は!?え、ちょ、リン!?」 焦ったようなレンの声を背中に感じながら、一目散に走り出した。 全部レンが悪い。 だって今日は珍しくワンピースを着て、少しグロスも塗って、上目遣いとかもしたし。 いつもより女の子っぽい口調も使った(はず)! なのにレンは何も変わらない。 鈍感なのはいつものこと。 それは仕方ない。 だけど、極めつけの一言がこれだよ。 <リンくっつきすぎ。暑い> あの邪魔そうな目! はらたつ! 少しは可愛い!とかどきゅんとこないのかしら! そりゃリンだって暑いよ! でも何故かくっつきたくなるの! そういう乙女心を… 「なんで分かってくれないんだろう。」 走り出してしばらくしてから、ふと冷静になって立ち止まる。 怒りが段々と冷めていき、変わりに空しさが胸を占めた。 レンが好きだって気づいた。 レンも好きだって言ってくれた。 一緒にいて、ぎゅーってしてれば幸せだった。 なのに。 あんな歌を歌ったせいだろうか。 なんか、なんていうか、変態な意味じゃなくて。 レンともっと恋人らしいことをしたくなったのだ。 イチャイチャしたくなったのだ。 何よりレンに、そう思わせたくなったのだ。 えっと、なんて言うんだっけ…? そう!よくじょー!して欲しくなったの。 でも、どうすれば良いかなんて分からない。 だってリンはミクちゃんみたいに女の子らしくないし、ルカちゃんみたいに色気もない。 ほんと、おこちゃま。 はあ……… 「なんで、レンあんなに怒ってたんだろう。」 せっかく少しでも、と思って可愛くしてきたのに、いつもよりもレンは冷たかった。 なんなのよ。 なんかリンだけ頑張って馬鹿みたいだ。 リン、何がしたいんだろう… ああだめだ!心の中がもやもやする! 近くの公園に入って、ベンチに座りこんだ。 すう、と息を吐いて歌を歌う。 この間新しく渡された歌だ。 「ねえねえ、ちゅーして、」 女の子が、中々手を出さない男の子に歌った歌。 可愛い可愛い恋の歌。 「今日こそ、はー…」 真っすぐに思いを伝える女の子。 リンも、彼女みたいに素直になれたらいいのにな。 「恥ずかしがった、り、しないかっ…らあー♪」 歌いながら嗚咽がこみあげてきた。 あはは、これじゃ全然明るい歌に聞こえないや。 どうしてレンはリンに何もしないんだろ う。 色気がないから?妹みたいだから? (私、妹なんかじゃ、ないのよ!) そうだ。リンが。 この歌みたいに言えれば良かったんだ。 勇気がないのはリン。 恥ずかしがってるのはリン。 悪いのは、リン。 「あっな、た…とちゅー、する…っひっく、」 本当は、 ずーと我慢してるんでしょ? |