かぷ

□CHU!して!
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ばか。
ばかばかばか!


「レンの馬鹿!」
「は!?え、ちょ、リン!?」


焦ったようなレンの声を背中に感じながら、一目散に走り出した。
全部レンが悪い。

だって今日は珍しくワンピースを着て、少しグロスも塗って、上目遣いとかもしたし。
いつもより女の子っぽい口調も使った(はず)!

なのにレンは何も変わらない。
鈍感なのはいつものこと。
それは仕方ない。
だけど、極めつけの一言がこれだよ。


<リンくっつきすぎ。暑い>


あの邪魔そうな目!
はらたつ!
少しは可愛い!とかどきゅんとこないのかしら!

そりゃリンだって暑いよ!
でも何故かくっつきたくなるの!
そういう乙女心を…


「なんで分かってくれないんだろう。」


走り出してしばらくしてから、ふと冷静になって立ち止まる。
怒りが段々と冷めていき、変わりに空しさが胸を占めた。

レンが好きだって気づいた。
レンも好きだって言ってくれた。
一緒にいて、ぎゅーってしてれば幸せだった。
なのに。

あんな歌を歌ったせいだろうか。
なんか、なんていうか、変態な意味じゃなくて。
レンともっと恋人らしいことをしたくなったのだ。
イチャイチャしたくなったのだ。

何よりレンに、そう思わせたくなったのだ。
えっと、なんて言うんだっけ…?
そう!よくじょー!して欲しくなったの。

でも、どうすれば良いかなんて分からない。
だってリンはミクちゃんみたいに女の子らしくないし、ルカちゃんみたいに色気もない。
ほんと、おこちゃま。

はあ………


「なんで、レンあんなに怒ってたんだろう。」


せっかく少しでも、と思って可愛くしてきたのに、いつもよりもレンは冷たかった。
なんなのよ。

なんかリンだけ頑張って馬鹿みたいだ。
リン、何がしたいんだろう…

ああだめだ!心の中がもやもやする!
近くの公園に入って、ベンチに座りこんだ。
すう、と息を吐いて歌を歌う。
この間新しく渡された歌だ。


「ねえねえ、ちゅーして、」



女の子が、中々手を出さない男の子に歌った歌。
可愛い可愛い恋の歌。


「今日こそ、はー…」


真っすぐに思いを伝える女の子。
リンも、彼女みたいに素直になれたらいいのにな。


「恥ずかしがった、り、しないかっ…らあー♪」


歌いながら嗚咽がこみあげてきた。
あはは、これじゃ全然明るい歌に聞こえないや。

どうしてレンはリンに何もしないんだろ
う。
色気がないから?妹みたいだから?


(私、妹なんかじゃ、ないのよ!)


そうだ。リンが。
この歌みたいに言えれば良かったんだ。
勇気がないのはリン。
恥ずかしがってるのはリン。
悪いのは、リン。


「あっな、た…とちゅー、する…っひっく、」


本当は、


ずーと我慢してるんでしょ?


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