レンくんはかっこいい。 「リンのレンはかわいいよ!」 「レンくん?あの可愛い感じの子でしょ?」 「レンくんって可愛いですよね」 他の子は皆可愛い、って言うの。 確かに目もくりくりだし。 ほんわかしてるし。 声だって高い。 でも (レンくんは、かっこいい) そうボーッと思いながら何となく足を動かすと力強い腕に引っ張られた。 意識をこちらに戻すと、目の前には激しく行き交う車。 一気に体温が冷える。 ま、まだ赤だったんだ。 「あっありがとうございま…」 「ミクさん!ぼーっとしてたら危ないでしょ!」 焦って振り向くと見知った顔、というかさっきまで思い描いていた顔。 今度は体温が一気に上昇して心臓が高まる。 体の変化に温度差が大きすぎて死んでしまいそうだ。 暑くなっていく私の体など知らずにレンくんは焦ったような怒ったような低い声を出した。 「もう…轢かれたらどうするんですか。」 「ごめんなさい…」 もっともな説教に頭を下げる。 うう、レンくんに怒られた。 うなだれるていると、レンくんが表情を崩してふわりと笑う。 「ったく、次は助けてあげませんからね?」 「あ、りがとう。」 いえいえ、と言ってレンくんは腕を離した。 掴まれたところにはまだ熱が残っていて。 そこを軽く手でさすると、また胸がどくりと跳ねた。 (ほら。) レンくんはかっこいい。 皆知らないんだろう。 可愛い顔で笑うレンくんに、こんなに力があるって。 声変わりのしてないレンくんに、こんなに低い声も出せるって。 レンくんは小さくて、可愛いけど。 「え、すいませんミクさん痛かったですか?」 「え、あっううん!大丈夫!」 私の小さな動作まで見ていてくれる、レンくんは私の王子様だ。 王子様はちょっと言いすぎかな。 自分の考えにくすりと笑いながら私はレンくんの手を握った。 「……っ!」 「ふふ、レンくん一緒に帰ろう?」 「は、い。」 赤い顔を隠すようにそっぽを向くレンくんに胸がどうしようもなく温かくなる。 と思ったら次の瞬間、手を強く引っ張られた。 意外にも私より強いその力に、体が少しまえのめりになる。 目の前にあるのはレンくんの小さな背中。 「…行きますよ。」 あはは、耳まで赤いから後ろから見てもバレバレなのにな。 まあいいや。 にやける口を抑えようともう一方の手を頬に持ってきたら、思ったより熱くて驚いた。 やば、私も顔赤いかも。 ああもう。 やっぱりレンくんは、かっこいい。 誰も知らなくて良いけどね! |