「ねえ俺のこと好きなら、さ」 彼は驚く程妖艶に微笑んで外を指差した。 「今すぐ飛び降りて死んでよ。」 笑みを崩さない彼にぞくりと背筋が震える。 そんな私を軽蔑するように見つめながら彼は鼻で小さく笑った。 「ね、大人気アイドルのミクちゃんにはできないでしょ?死ねないでしょ?」 だから信用できないんだよ、と冷たく言い放つ彼に鳥肌が立つ。 「そんな作られたニコニコ顔で好きとか言うなら、今すぐ俺の為に死んでよ、ねえ」 彼は笑った。楽しそうに。 外を指差したまま動かない指先に、その笑みに、心臓が熱くなる。 私、Mなのかな。 こんな彼が。 私をなじる彼が。 死ねという彼が。 全身に快感のような鳥肌が立つくらい愛しいのだ。 ああ、ねえ 「レンくん。」 呼びかけると冷たい目で私を見る。 名前を呼ぶな、とでも言うように。 「なんだよ。」 「私、あなたの為に死んであげるけど、あなたが好きだから、」 言いながら彼の前に座りこみ彼の両手を私の頬に当てる。 彼は目を丸くして驚いたように私を見た。 私は気にせず彼をジッと見つめて笑う。 大好きだよ、レンくん。 「せっかくだから、殺してよ。」 柔らかく呟いた。 死ぬなら、どうせならあなたに殺されて死にたい。 「ねえ、お願い。死んで欲しいなら、私を殺して?」 そう言うと、開かれた彼の目がすぐに妖艶なそれに変わった。 しかしさっきよりも瞳に優しさが滲んでいることを私は知っている。 「……ふふ。」 彼は小さく笑いながら私の唇に貪りついた。 舌を絡めながら、流れるように彼の手が首に降りる。 その異様なくすぐったさに、込められた力に、唇の温かさに、全身がくらくらして、涙が出た。 ああ、気持ち良い。 歪んだ綺麗なあなたが好き。 だから今私、幸せ。 「大好きだよ、ミクちゃん」 そう嬉しそうに言ってキスをする彼にまた快感が全身を走る。 首とキスの息苦しさは私の意識をここから遠ざけ始めて、それがどうしようもなく気持ち良かった。 歪んでいるのは私の方かもね。 なんて自分で笑いながら、私はくらくらと気持ち良くぼやける世界に意識を飛ばした。 ああ、レンくん、大好きよ。 |