かぷ

□ねえ歌うよいつまでも
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「ねえ、レン」
「んー?」
「もしも人間だったら、何がしたい?」


振られたのは、リンお得意のもしも話。
どうするも何も…俺達には心もあるし、普通に遊んだりもさせて貰ってるし、人間になったからってそんなに変わらないと思うんだけど。


「んー…ここはベタに、学校に行きたい、かな?」
「ええ!宿題とかめんどくさいよ!」
「それもきっと醍醐味なんだよ多分」
「そうかなあ。あっでも文化祭とか、楽しそうだよね!」


表情をくるくる変えて目を輝かせるリンに、思わず笑ってしまった。
文化祭かあ、確かに楽しそう。
マスターの妹の文化祭を見に行った時の、あの華やかな様子を思い出す。


「ステージとか、大きかったよな」
「ね!あそこで歌ってみたいよー!」


手足をバタバタさせてそう言うリンを見ながら、ほら結局歌うことばっか考えてんじゃん、なんて思った。

広いステージに胸をはせていると、俺を見たリンがにやりと笑う。


「そんなこと言って、レン、」
「ん?」
「セーラー服のミク姉が見てたいだけなんじゃないの?」
「…っ!は、はあ!?んなわけないだろ!」


ニヤニヤと言い放ったリンの言葉に、思わず顔が熱くなる。
真っ赤だよなんて馬鹿にされて本当に腹が立つのだが、残念ながら自分が今猛烈に赤いことは自分でも分かっていて。

だって、まあ、そりゃあ。


(セーラー服とか、凄い、可愛かったし)


この前の撮影で皆して学生服を着たことを思い出すと、ミクさんはやっぱりとてつもなく可愛かった。
から、別に、そんなこと考えてないわけでも…

ああでもあんなミクさんを毎日見れるというのは、他の奴も毎日見れるということで。
それは勘弁して欲しい、というか嫌だ。


「…レン、今色々妄想してるでしょ」
「してねえよ馬鹿!」
「素直になれば良いのに。」
「そ、そういうお前は、どうなんだよ」
「え?」


どこまでも俺を馬鹿にしてくるリンを軽く睨みつけながら、聞き返す。


「リンは人間になったら何がしたいんだよ。」


好きな奴に対して素直になれないのは、リンだって同じだ。
今度は俺がリンのことを色々聞き出して、ミクオとのことをおちょくってやる!
そう思ってリンに向かってニヤリと笑った、ら。

リンは思いの他すっきりとした笑顔で、俺に笑って見せたのだった。


「あのね、リンはね、人間には絶対なりたくないの。」
「え?なんで、」
「だって、ミクちゃんがボーカロイドじゃなかったら、クオ兄は生まれないでしょ?」
「…あ。」


確かに、ミクオは俺達とは違う。
だって彼は、本当のボーカロイドじゃないから。


「だからね、リンはクオ兄がいない世界なんて嫌だから、人間にはなりたくないの!」


…自分から話振っておいて、なんて回答してんだよ。
そう心の中で悪態をつきながらも、どこまでも優しい笑顔で笑うリンを見ると、ああもう叶わないわと思った。

リンも大人になったよなあ。


「…じゃ、ボーカロイドが一番ということで。」
「うん!そしたらレンともずっと一緒だし!」
「人間でもずっと一緒だと思うけどね」
「わっかんないよお?思春期とかあるし!」
「ははっ、まあそれもありえるか」


おどけてみせるリンに俺もつられて笑いながら、彼女の手をぎゅっと繋ぐ。
うん。幸せ。
不満がないわけではないけれど、俺もリンも今のままで十分みたいだ。


「ねえ、レン!ずっと一緒に歌おうね!」
「当たり前だろ?だって俺たち、」


「"鏡音一家"、なんだから。」


同じ苗字で繋がった俺達が、ボーカロイドで繋がった俺達と彼女らが、離れるなんてありえないのさ!


***
撮影は、DIVAのOPイメージで


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