「泣き虫。」 「うう…だってえ…!」 どんなに隣にいる彼が溜息をつこうと、私の涙腺は中々治まってくれない。 お願い涙止まって、なんて思いながらも、何だかんだで頭を撫で続けてくれる彼に甘えてしまう私は、このまま泣いて悲しみを吐き出していたいとも思った。 「ったく、何でそんな泣くんだよ」 「だってっ、クオ兄、優しいから、」 「馬鹿。お前の大好きなレンはどうしたレンは」 「レンは、ひっく…私が泣くと、泣いちゃうから」 そう言うと、クオ兄は納得したように黙り込む。 "シンクロしすぎるのも困り者だな"と小さく呟かれた。 そう、レンは繋がりが強すぎるからか、私が泣いているのを見るとレンまで泣いてしまうのだ。 レンに悲しい気持ちは持って欲しくないから、レンの前ではあまり泣きたくない。 「うう、ひっく、」 「…まあ、好きなだけ、泣けば」 泣いてる理由は聞かないで、ただ無造作に頭に手を置かれた。 ほら、やっぱり優しいじゃないか。 クオ兄は意地悪なのに、こういう時はやけに優しい。 それが温かくて、彼の隣はとても落ち着けて、だから私はクオ兄の前ではすぐに泣いちゃうんだ。 「クオ兄、ありがとう…」 「いや俺何もしてませんが」 「良いの、いるだけで嬉しいの。」 「……。」 レンに見られたくないから、だけじゃない。 私が悲しくてたまらない時、何故かいつも側に、クオ兄がいてくれる。 たまたま出会ったり、家に来たり。 いつも私はそんな奇跡のような偶然に救われて、運命なんじゃないかとか思ってしまって。 クオ兄の隣にこうやって座るだけで、どれ程私が救われるか、クオ兄は知らないんだろうなあ。 そう思うと、胸がじんわり温かくて、さっきまでとは違う意味で涙が出た。 すぐに困ったような顔をするクオ兄の表情さえ、嬉しくなってしまう私はもうだめだなきっと。 「ああもう、またすぐ泣く…」 「へへ、クオ兄の隣、あったかいなって思ったら、涙出ちゃった」 「意味、分かんない」 ぶっきらぼうに言いながら、頬を少し赤くする彼にこっちまで恥ずかしくなる。 「自分から言ったのに何赤くなってんの。」 「あ、赤くなんかなってないもん!」 頬を膨らませて反論すると、クオ兄はまたくすくすと笑って私の頭に手をおいた。 優しく髪を梳かれる感触に、また胸がちょっとだけ高鳴る。 照れ臭くなって思わず俯いたら、まだ瞳に残っていた涙がぽたりと落ちた。 「怒ったり泣いたり…ほんと忙しいなお前」 「悪かったね。」 「いや、まあ」 「嫌いじゃないけど」 何気なく放たれたそんな言葉。 私だって、その発言に嬉しくなってにやけてしまう自分も、この気持ちも、クオ兄のことも別に、嫌いじゃない! 「ねえ、また私が泣いちゃったら慰めてね。」 「えーめんどくさ…」 「ふふふ、嘘つき」 何度泣いてしまっても、何度もあなたが頭を撫でてくれるから。 だから、何度だって私は立ち直れるの。 |