「ねークオ兄ー」 「んー?」 「ネギって美味しいの?」 顔立ちの整った男がリビングでネギを1本丸ごとまるかじりしている光景は中々にシュールだった。 というかくさい!クオ兄ネギくさいよ! 「むしろ何故お前はネギを食べれない」 「いや食べれるけど!さすがに生は…」 「生だから美味いんだよ馬鹿。」 ミク姉にも昨日全く同じことを言われた。 いや、おかしいよね? リンの感覚間違ってないよね? 「いくら設定だからって食べられるものなのかな…」 「んなこと言われたって美味いものは美味いし。」 「ええ〜?」 疑いのこもった目線を向けると、クオ兄は嫌そうにこちらを睨みつけた。 そして、ずいっとネギをこちらに差し出す。 「え、」 「良いから一口食べてみろよ」 「え、いや、それはちょっと…」 「食べてないのに馬鹿にすんな!」 口元に近づいてくるネギ。くさい。 何これ、何の罰ゲーム?リン何か悪いことした? 「クオ兄!ごめんなさいごめんなさいもう馬鹿にしないからあ!」 「その"それだけは勘弁して"みたいな態度が逆に腹立つ。」 「えええ!?ちょ、ほんと、無理っ!」 鼻をつきさす匂いに思わず涙目になる、見上げるとネギを持ったクオ兄はにやにやと笑っていて。 怒ってない。 完全に、かんっぜんにリンのこといじめて楽しんでる…! 「クオ兄、無理だからほんと!リン、こんなの食べれないよう!」 「………。」 「うう、くさい!やだあ!」 「………。」 「んっ、てかこのネギ大きすぎ…!」 ん? いきなり静かになったなと思ってまたチラリとクオ兄を見上げると、その瞬間ぐいっと腕を引かれた。 何がなんだか分からない内に唇が重なる。 「え、クオ兄?え、え、え、」 「うるさい。黙れ」 「いやっあの!えと!」 うるさい。 もう一度そう言われて、また口をふさがれる。 あの、あの、ど、どうしよう。 心臓がドキドキして頭まで響いてうるさくて、どうすれば良いか分からなくて、言葉にならない声を上げることしかできない。 そんなリンを見てクオ兄は楽しそうに笑った。 このドS男め…! クオ兄、ちゅーがネギくさい。 なんて言ってせめてもの抵抗をしようと思ったけれど、次々と落とされる唇に、やっぱり上手く言葉を発することができない。 なんなのクオ兄。発情期なの? 余裕の表情のクオ兄に対して、心臓がもたなくて今にも倒れてしまいそうな自分が悔しかった。 くそ!やっぱかっこいいよムカつく! 耳元で囁く彼の声に、また体の熱が急上昇した。 「さっきの、ちょっとムラムラした。」 しね、ばか。 (おこちゃまのくせに色気出してくんじゃねえよ馬鹿) (出した覚えないわよ馬鹿!) |