「皆、ただいまあ!」 ドアを開けた瞬間に満面の笑みを見せたミクさんに、こちらまでふにゃりと笑顔になる。 むしろこのふわふわ空気に伝染するように、その場にいた全員がだらしなく頬を緩めた。 というか。 (なんで玄関のお出迎えに全員きてんだよ…) チャイムが鳴った瞬間走り出した自分は何とか玄関に一番に辿り着き、ミクさんを最初に迎える権利を得たはずなのだ。 なのに振り向けばいつの間にか、一家大集合。 相変わらずというかなんというか、正直に言うと大変邪魔である。 「ミク、ご飯にする?お風呂にする?」 それとも俺?だなんて気色の悪い言葉が聞こえない内に、カイト兄の足を思いっきり踏んづけてリンが笑った。 「ミクちゃんおかえり!寂しかったよう!」 「ふふ、リンちゃんは大げさだなあ」 「本当だってばー!」 瞳をキラキラとさせながらミクさんに抱きつくリンは傍目から見れば微笑ましい妹みたいだ。 しかし奴の本性を知っている俺にとっては、全く可愛く見えない。というかむしろ気持ち悪いよ。 「もう、ミクだって疲れてるんだからあんまりはしゃがないの!」 「えー、めーちゃんのケチ!」 そんなリンを無理矢理引き剥がして、呆れたようにメイコ姉さんが言った。 あくまでも良いお姉さんという雰囲気で口を出しているが、ミクを取られて不機嫌になっているようにしか俺には見えない。 「まあ、私も寂しかったけどね。おかえり、ミク。」 嬉しそうに微笑んで自分はミクさんの頭を愛しそうに撫でるのだから、やっぱりそうなんだろう。 ミクさんも「皆過保護なんだから」なんて言いながらも、目を細めて気持ち良さそうに撫でられている。 というか、ほんとに、こいつらは! 良い家族のフリして下心もってんの、丸分かりなんだよ! 「レンくんも、ただいま!」 心の中で怒りを大噴火させていた俺にミクさんが笑いかける。 その瞬間胸が嬉しさに高鳴って、俺もまたふにゃりと笑顔になってしまうのだから、本当にミクさんの力は凄いというか可愛いというか、俺も弱いなあというか。 「早くどきなさいよレン」 ぼぞりと呟く片割れが邪魔というか! |