「ミクさん今すぐ逃げて下さい」 「へ?な、なんで?」 「今日ですよ隣の家に鏡音アペンドが届くの!」 「あっそうなんだあ!楽しみだねっ」 「楽しみなんかじゃないですよ!ほら早く!」 いきなりレンくんに肩を掴まれたので思わず後ずさる。 あのー、レンくん。目が死んでるよ。 逃げるも何も、何処に行けと言うのだろうか。 新しい子が来るなら、そりゃあ私だって会いたいし。 私が笑うと、レンくんは焦ったように首をぶんぶんと振った。 肩を掴む手に力が込められる。 「逃 げ て 下 さ い !」 「どうして?レ、レンくん目が怖いよ!」 「だって絶対あいつミクさんを…」 ぴーんぽーん 私の話を聞いてるんだか聞いてないんだかよく分からないレンくんは、玄関のチャイムの音を聞いて小さく叫び声を上げた。 私がドアへ向かおうとすると、レンくんに肩を押され部屋の奥に追いやられる。 「レンくん?」 「良いですか?ぜっったいに出ないで下さいね?」 「え?え?」 疑問を口にする間もなく、レンくんは部屋の扉を閉めて行ってしまった。 首を傾けながらもとりあえずソファーに座ってみたが、どうしても気になってそわそわしてしまう。 レンくんがあんなに必死になるの、珍しいなあ。 (ごめん、レンくん!やっぱり気になっちゃうよ!) 私は少しだけ扉を開けて、レンくんが向かった玄関の方をこっそりと見つめた。 ちょうど玄関の扉まで来たレンくんが、がちゃりと鍵を開けている。 「ハロハローこんにちは。ってあれ?レンだけ?」 「こんにちはアペンドくん。気持ち悪い挨拶してんじゃねえよ。」 「あっららー冷たいねえ。俺よりちっちゃい鏡音レンくんは年上のくせに礼儀も知らないのかなあ?」 「…っ!うるさい!何であんた一人なんだよどうせならリン出せ!」 「それはこっちの台詞。無印リンちゃんにお出迎えして欲しかったね。」 …お、面白い! 扉を開けるとそこにいたのは、アペンドの衣装を来た、レンくん。 多分今日来たという、隣の家の子だろう。 私の知っているレンくんよりはちょっとだけ大きいけれど、顔はやっぱりそっくりで。 そんな全く同じ顔をした二人が、出会って早々笑顔で厭味を飛ばしあっている。 しょ、初対面のはずだよね? っていうか、何ていうか。 レンくんが二人って、 (て、天国…!) 睨みあいながらもレンくんは凄く可愛くてその事実は変わらなくてとりあえず可愛い。 可愛いレンくんが二人もいるなんてまさに両手に華、可愛さ2倍。 ああっ早く二人まとめてぎゅーってしたいよう! 私まだ出ちゃだめなのかなーなんでかなー、なんて思いながらも、勝手に頬がにやけてしまう私は覗き見をやめることができなかった。 二人はそんな私には気付かず、まだ火花を飛ばしあっている。 |