「じゃじゃーん!」 両手を広げてクオ兄の前に立つと、クオ兄は目を丸くしてこちらを見た。 ふふ、予想通りの反応。 「どうしたんだよ、それ」 「ミクちゃんがやってくれたの!」 そう、今日の髪型はいつものリボンではない。 "たまにはリンちゃんもイメチェンしようよ!" リンのリボンを取って髪を梳かしながら、ミクちゃんはそう言った。 たまには良いかな、なんて思って頷くと、あっという間に女の子らしい髪型にしてくれたのだ。 さっすがミクちゃん、可愛い女の子は違うなあ。 「どう?たまには良いでしょ?」 「…まあ、良いんじゃね。」 「えー、微妙な反応!」 ぶっきらぼうな彼の言い方に頬を膨らます。 確かに自分でも見慣れないけど、やっぱりこういうくるくるした髪型とか、憧れだったし。 もうちょっと反応してくれても良いじゃない! 「ねーえークーオー兄ー!」 「あーはいはい可愛い!可愛いから離れろ!」 思わず顔を近づけて詰め寄ってみると、クオ兄は焦ったように顔を背けた。 投げやりながらも可愛いと言って貰えたので満足して、彼の隣に腰かける。 クオ兄の頬が赤い。 無理矢理近寄ったからとか、焦ってたからとか、あるかもしれないけど。 少しは自惚れても良いかな。なんて。 「ふふふ、」 「…なんだよ。」 「なんでもなーい!」 にやにやと頬を緩ませて笑っていたら、クオ兄がチラリとこちらを見た。 何だろうと見つめ返すと逸らされて、またチラッと見てくる。 そうして、クオ兄が段々とそわそわしてきた。 なになに?どうしたの? 思わず首を傾ける。 「クオ兄…?」 「い、いや、あの、」 「ん?」 「あーもう!落ち着かない!」 そう叫んだかと思うと、いきなり両手で頭を押さえられた。 ガシッなんて効果音がつきそうな位強いクオ兄の手に、何故だか顔が熱くなる。 な、なんだか新鮮な感覚。 (ああそうか) 普段よく頭のリボンはいじられているけど、直接触られたのは初めてかもしれない。 クオ兄の手ってこんなに大きかったっけ、なんて思いながら、頭にかかるわずかな重みと温かさに胸が高鳴る。 近づくクオ兄の顔に心臓がどんどん音量をあげていくが、彼の放った一言はムードも何も無かった。 「なんか俺お前のリボンをこう…掴んだり引っ張ったりしないと落ち着かないんだよ!」 「はあ!?馬鹿じゃないの!」 「あーもー!手持ち無沙汰ー!」 なんの意図があるんだ、と彼を見つめると驚く位切羽詰まった顔をしているので、多分本当なのだろう。馬鹿でしょ! 珍しく冷静でない声をあげながら、クオ兄は両手でそのままぐしゃぐしゃと乱暴に頭を撫でる。 「ちょ、ぐちゃぐちゃになっちゃう!」 「ははっ阿呆面だ」 「ばかあ!」 必然的に近くなる顔とか、たまに頬に指が掠めることとか、色んなことが無駄に体温を上昇させていく。 クオ兄はただ面白がってるだけなのに、何だか自分ばっかりで悔しい。 だけど。 何はともあれ頭も撫でて貰えたし? たまにはリボンが無くても良いかもしれない。 結局はどんな形でも、クオ兄がいつもと違う風にリンを見てくれれば、満足してしまうのだ。 (クオ兄の手気持ち良い…) |