かぷ2012

□バカとバカでバカップル
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「じゃじゃーん!」


両手を広げてクオ兄の前に立つと、クオ兄は目を丸くしてこちらを見た。
ふふ、予想通りの反応。


「どうしたんだよ、それ」
「ミクちゃんがやってくれたの!」


そう、今日の髪型はいつものリボンではない。

"たまにはリンちゃんもイメチェンしようよ!"
リンのリボンを取って髪を梳かしながら、ミクちゃんはそう言った。
たまには良いかな、なんて思って頷くと、あっという間に女の子らしい髪型にしてくれたのだ。
さっすがミクちゃん、可愛い女の子は違うなあ。


「どう?たまには良いでしょ?」
「…まあ、良いんじゃね。」
「えー、微妙な反応!」


ぶっきらぼうな彼の言い方に頬を膨らます。
確かに自分でも見慣れないけど、やっぱりこういうくるくるした髪型とか、憧れだったし。
もうちょっと反応してくれても良いじゃない!


「ねーえークーオー兄ー!」
「あーはいはい可愛い!可愛いから離れろ!」


思わず顔を近づけて詰め寄ってみると、クオ兄は焦ったように顔を背けた。
投げやりながらも可愛いと言って貰えたので満足して、彼の隣に腰かける。

クオ兄の頬が赤い。
無理矢理近寄ったからとか、焦ってたからとか、あるかもしれないけど。
少しは自惚れても良いかな。なんて。


「ふふふ、」
「…なんだよ。」
「なんでもなーい!」


にやにやと頬を緩ませて笑っていたら、クオ兄がチラリとこちらを見た。
何だろうと見つめ返すと逸らされて、またチラッと見てくる。
そうして、クオ兄が段々とそわそわしてきた。
なになに?どうしたの?
思わず首を傾ける。


「クオ兄…?」
「い、いや、あの、」
「ん?」
「あーもう!落ち着かない!」


そう叫んだかと思うと、いきなり両手で頭を押さえられた。
ガシッなんて効果音がつきそうな位強いクオ兄の手に、何故だか顔が熱くなる。
な、なんだか新鮮な感覚。


(ああそうか)


普段よく頭のリボンはいじられているけど、直接触られたのは初めてかもしれない。
クオ兄の手ってこんなに大きかったっけ、なんて思いながら、頭にかかるわずかな重みと温かさに胸が高鳴る。

近づくクオ兄の顔に心臓がどんどん音量をあげていくが、彼の放った一言はムードも何も無かった。


「なんか俺お前のリボンをこう…掴んだり引っ張ったりしないと落ち着かないんだよ!」
「はあ!?馬鹿じゃないの!」
「あーもー!手持ち無沙汰ー!」


なんの意図があるんだ、と彼を見つめると驚く位切羽詰まった顔をしているので、多分本当なのだろう。馬鹿でしょ!

珍しく冷静でない声をあげながら、クオ兄は両手でそのままぐしゃぐしゃと乱暴に頭を撫でる。


「ちょ、ぐちゃぐちゃになっちゃう!」
「ははっ阿呆面だ」
「ばかあ!」


必然的に近くなる顔とか、たまに頬に指が掠めることとか、色んなことが無駄に体温を上昇させていく。
クオ兄はただ面白がってるだけなのに、何だか自分ばっかりで悔しい。
だけど。

何はともあれ頭も撫でて貰えたし?
たまにはリボンが無くても良いかもしれない。

結局はどんな形でも、クオ兄がいつもと違う風にリンを見てくれれば、満足してしまうのだ。


(クオ兄の手気持ち良い…)


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