かぷ2012

□ピエロ
1ページ/6ページ



それは遠い記憶。もう何度も、何度も思い返した夢。

私よりずっと小さい君は、私の後ろをいつも歩いていた。
転んだだけですぐ泣いちゃって、べそかきながらそれでも私を追いかけて。

ほんと、可愛かったなあ。

でも実際は私の方がよく転んでドジしちゃってさ。
その度に君が笑うんだよね。
"ミクちゃん、馬鹿だなあ!"って。
私は恥ずかしくて、でも君が泣き止んでくれるのが嬉しくて。
不思議と温かな気持ちになって、君の顔を見て私も笑ったんだ。

何の取り柄もないこんな私でも、人を笑顔にできる方法があるって、その時初めて気がついたの。


(ああそうだ、)


こうして誰かを笑わせられるなら、楽しませる存在になれるのなら、私はいつまでも、ドジなピエロになろう。
あの日、私はそう誓ったんだ。

大丈夫。
誰かの為なら、いくらだって、頑張れるもの。

大丈夫、大丈夫。

そう小さく決意した私の所に舞い込んだのは、私の人生を変える一枚のチラシだった。


『サーカス団員大募集!』


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]