それは遠い記憶。もう何度も、何度も思い返した夢。 私よりずっと小さい君は、私の後ろをいつも歩いていた。 転んだだけですぐ泣いちゃって、べそかきながらそれでも私を追いかけて。 ほんと、可愛かったなあ。 でも実際は私の方がよく転んでドジしちゃってさ。 その度に君が笑うんだよね。 "ミクちゃん、馬鹿だなあ!"って。 私は恥ずかしくて、でも君が泣き止んでくれるのが嬉しくて。 不思議と温かな気持ちになって、君の顔を見て私も笑ったんだ。 何の取り柄もないこんな私でも、人を笑顔にできる方法があるって、その時初めて気がついたの。 (ああそうだ、) こうして誰かを笑わせられるなら、楽しませる存在になれるのなら、私はいつまでも、ドジなピエロになろう。 あの日、私はそう誓ったんだ。 大丈夫。 誰かの為なら、いくらだって、頑張れるもの。 大丈夫、大丈夫。 そう小さく決意した私の所に舞い込んだのは、私の人生を変える一枚のチラシだった。 『サーカス団員大募集!』 |