□君からの甘い餌
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「レンくんひま。」


そう言って座ってる彼の背中に背中をドシッとぶつけた。
ほのかに感じる体温に安心する。
しかしそんな私とは裏腹にレンくんは不機嫌そうな溜め息をついた。


「あのね、さっきも言ったけど…」


いつもより若干低めな声で言うレンくんに向かって頷いて見せる。


「分かってるよ!勉強中でしょ?」


レンくんは集中したい時は一人になりたいタイプだ。
楽譜を見るときとか、勉強するときとか。
それは分かってる。
でも、だって寂しい。


「ねー、休憩しなよ休憩」
「これ解き終わったらね」


そう呟くような声で適当を言う彼の意識はもうこちらに向いていないのだろう。
勉強熱心なのは良いことだけどさ。

こう置き去りにされると悲しい。


「レンくん、レンくん」
「んー?」
「レンくーん!」
「…うるさい」


呆れたように溜め息をつく彼に私も溜め息を漏らす。
せめてもう少し私を見て話してくれても!


「ね!レンくん!構ってよ!」


背中に抱きついて腕に力を込めた。
どうせ振り払われて怒られるんだろうな、とか思っていたら腕を掴まれた。

お?ついに折れたか?


「名無し子。」
「なあにレンく…」


ちゅ。
背中につけていた顔を上げると同時に唇が重なった。
生温い感触に、体温が一気に上がる。


「え、え、え…ななななに!?」
「ほら構った構った、離れてー」


いきなりのことに熱い頬を抑えながら動揺すると、レンくんは恥ずかしさの欠片もなく私を引きはがす。

な、なにそれ、軽い!

こんなのに赤くなって私馬鹿みたい。
馬鹿みたい、なのに。
心臓が爆発して死にそう。

何もなかったように勉強を続ける彼にイライラして今度は自分から唇を重ねる。
私がこのまま恥ずかしがって引き下がると思っていたのか、レンくんは目を丸くして私を見た。

私はそのままジッと彼を見つめる。


「レンくん、おかわり」
「今忙しいのに…」


そう言って溜め息をつきながらも私の背中に手を回すレンくんを見て、ああこれから構ってくれない時は色仕掛けでいけば良いのかとか思った。


(私より何かに夢中になっちゃ嫌)
(こんなんで集中できるかっての)



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