ロング

笑って、笑って。
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そんな訳であたしは早速『その子』の部屋を訪れていた。
もちろん、例の相談をするために。


「えへへ…。江ノ島さんが遊びに来てくれるなんて嬉しいなぁ」


そう言って彼女は──不二咲千尋ははにかんだように笑った。


「…あ、これ、良かったらどうぞ。こんな物しかなくて、ごめんね?」
「ううん。あたしが急に来ちゃったのが悪いんだし、気にしないでよ。サンキューね、不二咲」


不二咲は部屋の奥からお菓子とオレンジジュースを持ってきて、それをテーブルの上へ置いた。
彼女は嫌そうな顔一つしないで、あたしをこうしてもてなしてくれる。

うんうん、やっぱり不二咲に決めて正解だったかも。
ホント良い子よね〜、不二咲って。


「それで…相談したい事があるって言ってたよねぇ? どうしたの?」
「あ、う、うん…。実は……」


……うう…っ。
でもやっぱこういうのってドキドキするわぁ…。

あたしは緊張を紛らわすため、グラスに入ったジュースを口に含む。
ジュースのひやっとした冷たさは喉を通って、あたしの火照り気味な頭や身体を、少しだけ落ち着かせてくれる。


「江ノ島、さん…? だ、大丈夫? そんなに…言いにくい事なのぉ?」
「…ん? あ、ああ! え、えっと!」


しばらく口ごもっていたあたしを見かねてか、不二咲がそう言ってきた。

ここまで来て尻込みしててもしょうがない。
…言っちゃいな、思いきって言うのよ! あたしっ!


「あ、あのさあ…!」
「うん……」


不二咲はあたしが話すのを、急かそうともしないでじっと待ってくれていた。


「い、い、石丸ってさあ…何をあげたら喜ぶと思う?」
「え…っ?? い、石丸…君??」


あたしから奴の名前が出たのがよほど予想外だったらしく、不二咲はつぶらな瞳を更に大きく見開いて驚いていた。
まあ、それも無理はないんだけど…。


「つまり、江ノ島さんは石丸君にプレゼントがしたい…って事?」
「う、うん。えっと、実はさぁ…」


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