ロング

こんなクリスマスもあり…ですか?
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その1 命を賭けた…


「人間って死ぬと霊界に行けるって…本当なんかなぁ…? 占い料を水増し請求したり、百均で買ったビー玉を『金運上昇する奇跡のクリスタル!』なんてうそぶいて一個二十万で客に売り付けたりしたこんな俺でも…行けるんかな……。まあ、その答えは間もなく分かるか…。もし霊界に行けたんだったら……俺、丹●先生の助手にでもなるわ…。…じゃあ、な…。後のことは…頼んだべ……」
「お、おい葉隠ッ!? ワケわかんねえ事ほざいてんじゃねェッ! 目ェ開けやがれチクショウがァァァ!!」

「まずは…犠牲者一人目か…」
「あんたみたいなバカを助手になんてするわけないじゃん。だいいち役に立たなそうだし」


そう言ったきり、ぴくりとも動かなくなった葉隠。
そして、その傍らで大和田はひたすら嗚咽を漏らしている。

そんな二人を、大神と朝日奈はまるで嘲笑するかの如く見下ろしていた。
その表情には、仲間への慈しみ、思いやり──そういったものは微塵も感じられない。


「あー……。も、もう無理……。オレももう限界ッス!」
「…おい桑田、テメーまで! 弱音吐いてんじゃねェ! 男だろーがァ!!」
「…だ、だってよぉ…。だんだん…視界が、ぼやけて……マジヤバいって…。……最後くらいは、舞園ちゃんと、あんなことや、こんなこと……した、か…た……ぐふっ…!!」
「桑田アァァァァァァッ!!」
「フッ。これで二人目…だな」
「こんな時にまで下ネタとか……本っ当サイテー」
「………。桑田君、何か言いました?」


葉隠に続き、今度は桑田がパタリと倒れ込む。
それと比例するように仲間を呼ぶ大和田の叫びにはやりきれなさ、悲痛さが増していく。

一方の大神と朝日奈はというと、次々犠牲になっていく仲間達を意にも介せず、余裕すら感じさせる表情のまま依然として威風堂々と立ちはだかっている。

そして、桑田の最後の言葉を小耳に挟んだらしい舞園が大柄な大神の身体の後ろからひょっこりと顔を出した。
気のせいだろうか。その穏やかな微笑みの裏には、他者の追随すら許さないほどのどす黒いオーラを感じさせる。


「はあ、はあ、はあ……。ぶー子の幻影が…みえる…。ぼ、僕にも……、そろそろお迎えが来た、よう、ですぞ……」
「……!! お、おいっ!? 山田、テメーまで何言ってやがる!? こうなりゃテメーだけが頼りの綱なんだぞッ! それなのに…!!」
「………わ、我が、生涯に…一片の悔いなしいいいぃィィィ…ッ!!」
「や…、山田アアアアアアァァァァァァッッッ!!」


某漫画の登場人物のような台詞を残し、山田が力尽きた。
ある意味二次元オタクである山田らしい最後。とも言えるだろう。


「あとはお主だけか…大和田」
「…ねえ。もういい加減終わりにしなよ。これ以上続けてたって時間の無駄だし、…何より、あんた達が苦しむだけだよ…」
「……く…っ。ちくしょう……。…チクショウゥゥッ!!」


膝をついたまま拳を床に叩き付け、悔しげに大和田はそう叫んだ。
その切れ長の瞳に、うっすらと涙を浮かばせて。
超高校級の暴走族として名を馳せ、圧倒的な強さとカリスマ性を漂わせているいつもの彼はそこにはいなかった。


「『勝負には必ず勝つ』…。すまねぇ…。その約束、このままだと果たせそうにねえわ……兄貴…」
「自らの弱さを認め、乗り越えようとする事。その想いこそ『強さ』だという事は、お主が1番良く知っているであろう? …大和田よ」
「……!」


喉の奥から振り絞るようにか細く呟いた大和田に、大神は静かながらも強い口調で話した。
『強さ』とは何か──その事に固執する大和田にとって、大神の言葉は残酷なほど心に突き刺さる。


「クソぉ……っ。このオレが…こんな、こんな……!!」


──次の瞬間。
大和田は額に青筋を立て、腹立たしそうにこう叫んだ。


「…大食い対決に負けるなんてよォォォォッ!!」


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