ショート

The MARK.
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「江ノ島くん…」
「ん…」


僕は再び彼女と唇を重ねた。さっきよりも更に激しく。
互いの奥底をまさぐるように、貪るように。
彼女のほんの僅かな吐息も漏らさぬよう僕は彼女の口を塞ぎ、求める。

もはやキスと呼んで良いのか疑わしいほど荒々しいその行為に、僕はひたすら没頭する。
ただ無心に彼女を欲するこの姿は、もはや既に本能だけの獣に成り果てようとしているのだろう。


「…えのしま、くん…」
「…っ。はぁ…、いしまる…いしまる……っ」
「……ッ!!」


唇を離すと彼女は気だるげな眼差しのまま呼吸を乱し、僕を見上げていた。
情欲剥き出しのそのふしだらな光景は、僕の中の理性の残骸を粉々に打ち砕くには充分過ぎるほどだった。

身体が熱い。ただひたすらに熱い。
内側から沸々と、じりじりと込み上げてくる燃えるような感情を、もはや己だけでは制御し切れなくなっていた。
行き場を失った熱は、目の前の彼女に真っ直ぐに突き進むしかなかった。


「……っ、江ノ島くん……」
「……?」


今、本能の赴くまま、一思いに上り詰めてしまうのも良いだろう。
それでもきっと充分に満たされるはずだから。

けれど、それではすぐに終わってしまう。
この何よりも厳かで甘美な時間を呆気なく終わらせてしまうのは、やはり名残惜しい。勿体無い事だ。

それならば僕は、少しずつこの時間を食い尽くしていきたい。
時間の許す限り、君を全力で愛したい。

この声で、君の名前を何度でも呼ぼう。
この唇で、君に迸るような熱さを与えよう。
この指で、君の全てに触れよう。
僕の全てで、君をどこまでも狂わせてみせよう。
君に僕という存在そのものを刻み付けてみせよう。


……さあ、楽しい時間の始まりだ。
どうする? 逃げるなら今のうちだ。

もっとも、僕は君を逃がすつもりなんて毛頭ないけれど。君だってそれを望んでいるはずだろう?
まだまだ物足りない。もっともっと、君が欲しい。
そして君の身体に、僕の──。


「……さて。次はどこに印を付けてあげようか?」
















→あとがき


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