ショート
□忘れろビームで忘れさせたくないのは君の太陽のような笑顔だった
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石丸 「ッ!? み、澪田くん!? どうしたのだ? いきなりつんのめったりして…!」
澪田 「……」
石丸 「……? 澪田、くん…?」
澪田 「………?」
石丸 「……お、おい。本当に、どうしたというんだ? 様子が…おかしいぞ?」
澪田 「……あなた、だぁれ?」
石丸 「ッ!?」
澪田 「わからない。わからないの…。あなたがだれなのか。ついでに、わたしが一体だれなのか…。何も、わからない…」
石丸 「み、澪田くん…。まさか、君は…!」
澪田 「みおだ…? それが、わたしの名前なの? わたしの名前、みおだっていうの?」
石丸 「そ…ッ! そんなあァァァッ!! まさか、こんな…こんな事があああああああぁッ!!!」
澪田 「!?」
石丸 「君は、本当に…本当に何もかも忘れてしまったのか…!? 僕の発した、忘れろビームのせいで…!」
澪田 「え…」
石丸 「すまない…ほんの軽い冗談のつもりだったんだ…。きっと君ならば、僕のこのネタに、的確かつ斬新な反応を示してくれると信じていた…。しかし、しかしだなっ! こんな事になるとは思ってなかったんだ!! まさか、こんな取り返しのつかない事になるなんて…!!」
澪田 「あ…。え、えと、その、んーっと…」
石丸 「ぐっ…う゛う゛っ…! 頼む! お願いだ…思い出してくれたまえッ! 君の名前は澪田唯吹! 超高校級の軽音楽部の、澪田唯吹くんだぞッ!!」
澪田 「…あ、うん。だからね、そのぉ…」
石丸 「外見は奇抜で珍妙だし少々破天荒なところもあるが、いつも僕に明るく屈託ない笑顔を見せてくれて…僕にとっては太陽のような人なんだぞ!! 君は!」
澪田 「……。え…っ?」
石丸 「き、君が、君じゃなくなったら、僕は…僕はアァァァ!! ぐっ…ぐぬぬぅぅ…っ! だっ、だから…っ。だから、またいつもみたいに笑って、くれよ…っ。笑ってまた、僕の事を『清多夏ちゃん』と呼んでくれッ!!」
澪田 「……ちょ、ちょっとちょっと清多夏ちゃん! いい加減泣き止んでくださいっすよぉ! てかいくら清多夏ちゃんが無印ダンロンでは顔芸要員だからって、どんだけいかんなく顔面スプリンクラー機能発動させてるんすかぁぁッ!?」
石丸 「……ん? その、独特の喋り方は…澪田くん!? もしかして澪田くんなのかッ!?」
澪田 「もしかしなくても唯吹っすよお! 唯吹はいついかなる時も唯吹であって、他の誰かにはならないっす! てゆーか今の忘れたフリは、唯吹なりの的確かつ斬新な反応だったんすけど!」
石丸 「……っ! そ、そう、か…。よかった、それを聞いて安心したよ…!」
澪田 「……んーっと。ところで、清多夏ちゃん」
石丸 「ん? 何だね?」
澪田 「さっき言ってた事って、ホント…なんすかね?」
石丸 「? さっき言ってた事、とは?」
澪田 「ん…。だから、その……唯吹の事を、太陽みたいな人だって言ってた事っすよ」
石丸 「ッ!!? うがあああァァッ!! な、何故それを知っているんだッ君は!!?」
澪田 「さっき聞いたばっかりだから覚えてるに決まってるじゃないすか! …なんつーか、不意打ちで心臓がドッキリンコしちゃったっていうか…。清多夏ちゃんて、唯吹の事そんな風に思ってたんだなーって…」
石丸 「うわあああああああっ!! だ、駄目だぁっ!! さっき僕の言った事は忘れてくれたまえッ! 忘れろビーム!!」
澪田 「うわあああああああああああッ!!」
石丸 「はっ!? や、やはり駄目だあああぁぁぁ!! 忘れちゃ駄目だ! 何と言うか部分的に、部分的に忘れろビームッ!!」
澪田 「ひっぎゃあああああっ!! 部分的に忘れたああぁぁぁぁっ!! 部分的に、なんか色々忘れちゃったああぁぁぁああ!!」
大和田「兄弟のヤロー、青春してやがるな…。へっ、眩しくてこっちが妬けてくるってんだ。コンチクショウ!」
不二咲「ふふふ、石丸君も澪田さんも楽しそうだねぇ」
九頭龍「いや…あいつらどっちもボケキャラだから、ツッコミがいねぇと収拾つかねえだろ。誰か左右田呼んでこいよ」
辺古山(……『忘れろビーム』か。幼少の頃のように、ぼっちゃんとあんな風に戯れてみたいものだ。そうだ、私もひとつ何か考えてみようか。うーん、そうだな…『組に代わっておしおきよ!』なんてどうだろうか?)
九頭龍「……? どうした、ペコ?」
辺古山「…! あ、いえ、何でも…」
九頭龍「??」
→あとがき