ショート

SWEET SWEET'S KISS
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「ちーっす。邪魔するよー、石丸」


そう言いながら、石丸の部屋に上がり込んで来る江ノ島。その態度はまるで彼氏の家に遊びに来た彼女さながらだ。
そしてその手には、大きなコンビニのビニール袋がぶらぶらと提げられている。


「む? …な、何だね江ノ島くんその袋は!? 一体何が入っているんだ?」


ノートにシャープペンを走らせる手を止めた石丸は江ノ島に視線を向けると、驚いた表情をした。


「あ、これッスか? …うぷぷ、じゃじゃーん!」


そう言うと江ノ島はテーブルの上に袋を逆さまにし、大胆に中身をぶちまけた。
するとビニール袋からは、雪崩のように大量の箱やら小袋がぱらぱらと降っては落ち、テーブル一面に広がる。


「こ…これは…お菓子、か?」
「ピンポーン! 正解なのらー!」


袋の中に入っていたのは、全て菓子類だった。
スナックを始めチョコレート、キャンディ、クッキー、グミ…等々ありとあらゆる種類の菓子が詰められていた。


「君と言い朝日奈くんと言い、本当に女子はこういった物が好きなのだな…」


石丸はテーブルに広げられた中の箱を一つ手に取り、半ば呆れ顔で呟いた。


「ったり前でしょー。何はなくとも一にお菓子で二はお菓子、三、四はなくて五にお菓子ってな感じですから!」
「な…! 何という事だ…!! 君はそんな食生活ばかりしているのかッ!?」


石丸は嬉々としてそう話した江ノ島に反発し、嘆かわしく叫んだ。


「良いかねッ!? こういった食品には身体に有害な添加物が使われていたりするし、肥満の原因となる事も非常に多いのだ! こんな物ばかり食べていては、いずれ自分の身を滅ぼすのだぞ! 分かっているのかねッ!?」


どこぞの弁護士や検事よろしく人指し指を突き出し、石丸は熱く主張した。


「…あーもう、うっさいなあー。冗談だっての。もちろんちゃんとご飯だって食べてるっつーの。折角アンタと一緒に食べようと思って買って来てやったんだから、堅苦しい事言わないでよ」
「……僕と?」
「まあ、嫌なら別に良いけど。…じゃ、またね」
「…え、あ、いや…!」


ふてくされた表情でビニール袋に菓子を戻そうとする江ノ島。
それを見て、石丸は彼女を怒らせたのかと焦りを見せ始める。


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