ロング
□歩いて帰ろう
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「あ、おはよう。大和田君!」
「おおッ、兄弟ではないか! おはよう!! 今日も熱く共に語り合おうではないかッ!!」
「おはようございます、大和田君」
「チーッス、大和田。今日は学校来んの早いんじゃね?」
ある日の朝。
いつもの連中と、いつものように挨拶を交わす。
こうして当たり前のように、オレの一日が始まった。
オレがこの学園に入学してから、もう一年半が経とうとしていた。
入学した頃は「高校生にもなって青春謳歌ごっこなんてやってられっか。それに何より、そんなのらしくねえし」とか思ってたが、気付いたらこの学園生活にすっかり馴染んじまってる自分がいた。
……良く良く考えたらオレはすっかりその青春謳歌ごっこにハマってやがったワケだ。そりゃもう、こっぱずかしいぐれぇに。
下手するといつか夕日に向かって走り出すんじゃねーかって、我ながら心配になる。
一見アクの強そうなクラスの連中(オレも人の事は言えねーが…)とも次第に打ち解けられるようになって、人はやっぱ外見だけじゃ決められねえって事にも気付いた(これまたオレが偉そうに言える事じゃねーが…)。
……が、このクラスの中でたった一人。
いまいち取っ付きにくいヤツがいた。
「……おはよう」
「……あ、ああ……ウィッス」
そいつはオレの隣の席にいる、戦刃むくろっつー女だ。
隣の席同士な手前、挨拶くらいはして来るものの、それ以外で話した事はほとんどない。
つーかぶっちゃけ、この女が妹の江ノ島以外のヤツと会話してるのをあまり見た事がねえ。
オレがこの女について知ってるのは肩書きが超高校級の軍人だって事と、江ノ島とはだいぶ雰囲気が違うっつー事と…そんぐらいかな。
なんつーか、話しかけにくいタイプなんだよな。
軍人っていうだけあって、オーラが張りつめてるっつーか。常に臨戦態勢っつーか。
とにかく近寄りがたい雰囲気がある。
でもまあ、この女と話さなくたって他のヤツとはそれなりに上手くやってるつもりだったし、別に困りはしねーから良かったんだけどよ。
──そんな矢先の事だった。
オレの心境をガラリと変えるような、そんな出来事が起こっちまったのは…。