ロング

桜舞う聖夜、君に小さな雪を捧ぐ。
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「……も、もうダメ、限界ッス……。クソォ、最後くらいは舞園と、あんなことや、こんなこと…した…か…た…ぜ…」
「チクショウ……。このオレが…負ける、なんてよォ…。すまねぇ兄貴、…男の約束、守れなかった……」
「……な、なんつーか…霊界が見えてきた…べ…。丹●先生…いるんかな…」
「…わ、我が、生涯に……、一片の悔いなしィィィィッ!!」


各自思い思いの台詞を残し力尽きていく桑田、大和田、葉隠、山田達男性陣。

そしてそれを大神、朝日奈の二人は不敵な笑みを浮かべ、じっと見下ろしている。


「……。勝負…あったようだな」
「うん…そうだね。さくらちゃん」
「………。桑田君、呼びましたか?」


大柄な大神の身体の後ろから、自分の名前を聞きつけた舞園がひょっこりと笑顔を覗かせた。
…気のせいだろうか、その笑みにはどす黒いオーラのようなものを感じさせる。

そして全く動かなくなった男子四人を見て、朝日奈はニッと笑い両腕を高く振り上げた。


「この大食い勝負、私とさくらちゃんチームの勝利ーッ!!」
「フッ…」
「…チ、チクショー…! ま、負けた…!」


桑田は自分達の敗北を知り、がっくりとうなだれた。


「……あー…くっそ。めっちゃ腹苦しい…。さっきはマジで死ぬかと思った…」
「…ハア…。俺も、今までの出来事が走馬灯のように蘇ってきたべ。……つーか、走馬灯って何?」


極度の飽満により、まさに死んでいるかのように倒れ込んでいた桑田、葉隠、大和田、山田が次々に意識を取り戻し、ゆっくりと身体を起こす。


「しかし…大神も朝日奈も、良くそんなに食ってケロッとしてられんな…。どういう胃袋してやがんだ…」
「全くですな…。某ギャルタレントも顔負けの食いっぷりですよ…」


大和田と山田は、感心するような呆れたような口調でそう呟いた。

一方の大神&朝日奈コンビは、情けなく床に突っ伏した男子達を尻目に今現在も食べ続けている。

テーブルの上には大量に置かれた豪勢な食事と、ひとかけらも残される事なく綺麗に平らげられた皿の残骸とが、ほぼ同じ割合で置かれている。
…これだけの量を女子高生がたった2人で平らげたとは、一体誰が想像出来るであろうか。


「強き肉体を作るには、まずは食事が肝要だ。…これくらいはどうという事はない」
「てゆーか、あんた達が男のくせに軟弱過ぎるんでしょ? これくらいの量で音上げちゃって。だから今時の男子は『草食系』とか言われちゃうんだよ!」
「朝日奈さん…。それはちょっと意味が違うような気が…」
「う、うん…。ボクもそう思う…」


その様子を少し離れた場所で傍観していた不二咲と苗木が、申し訳なさそうに朝日奈の発言に突っ込みを入れた。


「まったく、高校生にもなって…。本当に子供みたいな人達ですわね」
「まあまあ、良いじゃんか。せっかくのクリスマスなんだし、カタい事言うなって」


その様子を呆れ顔で眺めていたセレスを、江ノ島が笑いながら宥める。


「そう言えば、今日は天気予報では雪のはずでしたけれど…全く降りそうにないですわね。せっかくロマンチックなホワイトクリスマスを期待していましたのに…がっかりですわ」
「…つーかさ。このメンツと一緒にいる時点で、ロマンチックな展開とか絶対ありえなくね?」
「ふう……。確かに、そうですわね」


江ノ島の言葉にセレスは頷き、小さく溜め息をついた。


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