ロング

その仮面を剥ぎ取るものは
1ページ/9ページ


──欺瞞と夢幻に満ちた、虚構の世界。

そこは一切の現実が存在せず、見渡すばかりの虚偽に満ち溢れた世界。何よりも美しく、何よりも耽美で退廃的な世界。
いつかそんなお伽の国のような世界で暮らすのが、彼女の夢だった。

そんな世界で味わうロイヤルミルクティーは、いかに甘美な味なのだろうか──もはや彼女の関心はその一点にばかり注がれており、それ以外の事象は彼女にとって些末で、かつ塵芥同然の存在でしかなかった。

無機質な現実には興味がない。
偽善と妥協と馴れ合いばかりの日常には、反吐が出そうなほど興醒めで。
そしてそこに住む人間にも、無論価値などなく。


だから、彼女は決めたのだ。
自らの夢を叶えるために他人を欺き、蹴落とし、そして──己の出自や名前、心すらも誤魔化し、虚飾する事を。

彼女はその日から『仮面』を着け始めた。
『セレスティア・ルーデンベルク』という名の、華麗なるまやかしの仮面を。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ