ロング

素直になれたら
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「江ノ島くん、一体何だねその服装はッ!? 『服装の乱れは心の乱れ』と言うだろう!?」
「…はあ?? 何それ? 超マジでワケ分かんねーし」
「あとその言葉遣いもだ!! 『超』だの『マジで』だの…日本語は文法を守って正しく使いたまえ!!」
「あーもう何なのよぉッ! 朝からホンットウザいんだけど! いい加減にしてよね!?」
「君が風紀を乱す行いをするからだろう! 注意されたくなかったら、もっときちんとしたまえッ!!」


朝、登校直後から繰り広げられるこんなやり取り。
もう毎日の事だ。

アタシがこの男──石丸と顔を合わせると、ろくな事がない。アタシからしたら完全に疫病神的存在。
会えばとりあえず挨拶代わりにお説教。
ウチとアイツはクラスメイトだから、要は毎日お説教食らってるって事なんだけどさ。

…もうマジで、ホントうんざり。勘弁してよ。
『学園の風紀が乱れる!』とか『学生はこうあるべき!』とか…超高校級の風紀委員だか何だか知らないけど、毎日そんな事ばっか熱弁しちゃってさ。暑苦しいったらありゃしない。
高校生にもなって、服装や髪型にケチつけられる筋合いねえっつーの。


「はあ……。今日も朝から最悪だったぁ…」
「ふふっ…」


アタシはようやく石丸の説教攻撃から解放され、うんざりした様子で自分の席につく。
すると、そんなアタシを隣の席の不二咲がにこにこ笑いながら見ているのに気づいた。


「…どうしたのよ、不二咲」
「あ…うん。江ノ島さんと石丸君ってすごく仲良いんだなあって、つくづく思っちゃってさぁ」
「はあぁぁッ!? …じ、冗談言わないでよ! だ、誰があんな堅物童貞野郎なんか相手にするかっての…!」
「そっかぁ…。ふふふふふ」
「………」


…何が『ふふふふふ』よ。
天使みたいなあどけない微笑みしちゃってさ。
相手が不二咲じゃなかったら、確実に張り倒してたトコだ。


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