夢幻なる縁
□2章 偽りの婚約者
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「それなんですが、昨夜から自動人形に襲われる事件が多発しているんです。その自働人形は黒龍の神子を捜しているとの報告もあります」
「え、私?」
いきなり話の内容は重くなり黒龍の神子捜しがなかったら、私達には無関係な事件だった。
もちろん心当たりがないだろう梓は誰よりもビックリして辺りを見回す。
可愛そうに。
でも自働人形が人捜しをしていて、人を襲う?
そう言うプログラムをされてる?
……なんだろう胸騒ぎがする。
「梓、夜な夜な悪行を犯してるんじゃないだろうな?」
「虎じゃないんだからするはずないよ」
「そうですよ。何を言ってるんですか? まさか虎が黒龍の神子の名を語ってるのでは?」
「ルードくん、それはないと思うよ。政虎さんが女性を語るのは無理がありすぎる」
「確かにそうだな。本条が女装…っぷ」
虎の嫌みはコハクくんの面白い発想により、想像したらしく村雨さんが吹き出す。
作家なだけに想像力は優れているのだろう。
虎の女装。
この中で一番似合わなそう。
似合うとしたらやっぱりコハクくんとルードくんかな?
九段さんも案外似合いそう。
「んな気色悪いことするはずねぇだろう? そこまで落ちぶれちゃいねえ」
「それもそうだね? 虎、悪かった。お詫びになんでもおごるから」
「お話がわかるじゃねぇか? おーいマスター」
機嫌を損ねる虎だったけれどダリウスのおかげで、あっという間にさっきより機嫌が良くなり、メニューをここぞとばかりに頼む。
虎をコントロールするには食べ物か。
何かあったら使おう。
「取り敢えずその自働人形を捜して、事情を聞きましょう」
「事情を聞けるのかしら?」
「その辺は私の得意分野だから任せてよ」
話は元に戻りそう言うことになるけれど千代のごもっともな疑問に、私は胸を張ってそんな不安を引き受ける。
プログラムだとしても少しいじくれば製造者なんてすぐわかるはずだから。
捜索中の自働人形は東京駅周辺で見つかったけれど、この時代と似合わないマシンガンを装備した昨日見た自働人形より遙かに人間らしい青年の姿。
自働人形って言わなければ、絶対に分からないと思う。
そして私は初対面で知らないはずなのに、心の奥底ではよく知っている矛盾を感じた。
……大切な弟分
だからなのか私は考えるよりも先に、青年の前に飛び出し襲われそうな人を護る。
「萬、辞めなさい。どうしてそんなことするの?」
まるで子供に躾をする親のようにしかり、その原因も追求する。
なんの迷いもなく青年を萬と呼んでしまったけれど、その名に心当たりはない。
でも私は知っている。
彼は誰がなんと言おうと萬だ。
「そこを退いて下さい。さもないとあなたも排除対……私があなたに攻撃する? それだけはしたくない。……なぜ?」
機械的な答えかけた途中、突然自問自答し苦しそうな表情を見せた。
青年も私を知っているけれど、私と同じで記憶にはない?
「帆波先輩、この青年を知ってるんですか?」
「記憶にないのに、なぜか知ってる。多分萬もそうだと思う」
「記憶がないのに知ってるって、どう言うことですか?」
誰もが疑問に思うことと納得がいかない答えしか言えなくて、余計梓達の頭を混乱させてしまう結果になる。
しかし本当のことだから、それ以上のことは答えられない。