夢幻なる縁
□2章 偽りの婚約者
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「二人ともすごく似合う。さすが私ね」
予想以上の二人の出来前に私はすっかりご満悦。
チェックのシャツにふんわりスカート。色違いの髪飾りに蝶のピアスにだてめがね。
これぞまさしく神聖な神子姫様の姿。
この前もそうだけれど、コーディネートするのは楽しいかもしれない。
私の意外な才能。
なんて馬鹿のように自画自賛していると、ひそひそ話をしたいた二人は私に悪魔の微笑みを浮かべた。
悪寒が走り、怖すぎて身構えてしまう。
「なんですか?」
「帆波のコーディネートは私達でしてもいい?」
「え、別に構わないけれど」
「なら手はず通りで」
「任せてよ。うんと可愛くするね」
恐れるほどの恐怖はなく気軽に頷いたのが運の突きだったらしく、梓は張り切りそう言って私を椅子に座らせられ髪をいじられる。
千代は真剣に服を選び始める。
二人だから変なのにはならないと思うけれど、いろんな意味で心配なのはなんでだろう?
「帆波先輩ってサラサラのストレートですよね? 羨ましい」
「おじいちゃんの遺伝のおかげかな? 家族は男性はくせっ毛でお母さんは普通なんだよね?」
「私のこのくせっ毛はおじいちゃんの遺伝です」
髪をいじりながら本当に羨ましそうに話すから、私もそれに合わせて話しをする。
私自身あまり気にしてないけれど、どうやら世の女性はサラサラなストレートに憧れを抱いてるらしい。
「そんなにストレートにしたいなら、超強力ヘアアイロン貸すけれど」
「そんなのあるんですか? 是非貸して下さい」
「ただし二度と元には戻らない。コシもハリもないストレートになるからね?」
「……帆波先輩、何を作ってるんですか? そのアイロン完全に失敗作ですよね?」
だから私は昔作った発明品を冗談半分で薦めると最初は乗り気だったけれど、真相を知るなり呆れきり容赦なく厳しいお言葉をもらう。
信実なのだから反論はできない。
「ほらよく言うじゃない? 失敗は成功のもとって。それに梓、ない物ねだりは良くないよ」
「それはそうなんですけれどね? でも一度でいいから、ストレートヘアをしてみたいんです」
「ウイングでよければあるけど」
「それでいいので、お願いします」
どうやら私が思っていたよりもくせっ毛は梓には深刻だったらしく、罪悪感が生まれてしまいなんとかしたくなってしまう。
だとしたら超強力ヘアアイロンを改良するしかないな。
尚哉さんに助言をしてもら……あれなんで尚哉さんなの?
確かに藤堂コンシェルツの技術は侮れないけれどそれは尚哉さん自身がすごいわけでは、そう言えば私尚哉さんに弟子入りしたよね?
なぜかあの時も今も尚哉さんがすべて発明したと思い込んでるし、あの人は優秀な人で私が家族の次に尊敬する人の気がする。
………なぜ?
「帆波先輩、急に考え込んでどうしちゃったんですか?」
「え、うん。私やっぱ尚哉さんのこと好きなのかな?」
「え?」
「帆波?」
思わず呟いてしまった台詞に嫌な予感しかしないワンピースを持った千代まで戻ってきて、驚きを隠せない表情で私の顔をガン見する。
そんなに爆弾発言だった……この二人は尚哉さんをよく思ってないから無理もないか。
それに九段さん推しだし。
「梓には昨日ただ身に覚えがあって気になると言ったけれど、よく考えるとそれだけでもなさそうなんだ。まだ良く分からないけれど」
「そう。帆波がそう言うんなら私は全力で力になるわ」
「千代、どうしたの?」
よく分からない理由にも関わらず、千代はなぜかあっさり応援すると言ってくれる。
少し表情は残念そうだけど。
「だって帆波の好きと言う気持ちを大切にしたいから。でもまだ九段にも十分可能性がありそうだから、私のお薦めは変わらないわ」
「うん、そうだね? 私もそうする」
千代の小悪魔的考えに素直の梓は深く考えずに便乗し、内心それはどうかとは思う。
結局の所恋愛相談には乗ってくれるけれど、それ以外は何も変わらず。
まぁそれでもいいけどね。
「千代、頼りにしてるね? それよりその服どこから持ってきたの?」
話を変え気になる服の話題にする。
確かそれは洋服ダンスの奥に封印しといたはず。
「あのタンスよ。さっき凪さんと話していて帆波も可愛い服を持っているって言うからね」
「おばあちゃん、許しまじい」
「え、ちょっと?」
と楽しそうに千代は答えてくれるけれども、それで私の怒りに矛先はすべておばあちゃんに行く。
衣装部屋を飛び出して、千代の声をスルーしリビングへ。