夢幻なる縁

□2章 偽りの婚約者
30ページ/38ページ

「帆波お姉ちゃん、いいな。ボクも欲しい」
「私も。ワンちゃん、あそぼ!」

 清人お兄ちゃんの子供の雄大と汀はコスモを紹介すると羨ましがり、無邪気に捕まえようとして追いかけ回す。
 五歳児と二歳児なんてこんなもの。
 四神達は慣れてるから相当雑に扱われても平気ではあるけれど、たまにシュウちゃんの雷が落ち説教され大泣きしている。
 私の時もそうだったらしい。

「クン……」
「二人ともコスモはおもちゃじゃないの。ちゃんと生きてるんだよ。二人も私に同じことされたら嫌でしょ?」

 すっかり怯えてしまい私の足元に隠れるコスモを抱上げ、二人の視線に合わせてまずは怒らず優しく教えてみる。

「うん、いや。コスモ、ごめんなさい」
「ごめんなさい」

 すると二人は理解してくれたらしく首を大きく横に降って謝るけれど、コスモは震え私から離れようとせず尻尾も萎れたまま。

 どうやらコスモは臆病らしい。
 ご主人様に忠実で勇敢だと聞いているし、お兄ちゃん達の犬もそうだった。

 私は怨霊退治もするのに、大丈夫だろうか?
 お留守番?

「お前達も大きくなったら、ちゃんと相性の良い奴を送るからな 。そう言う決まりだ」
「ねぇお兄ちゃん。何回寝たら大きくなれるの?」
「分かんないけれど、とにかくたくさん」

 そこへおじいちゃまがやってきて我が家の決まりを教えるけれど、二人はイマイチ分からず首をかしげ合いおじいちゃまに抱きつく。
 すっかり笑顔が緩みまくるおじいちゃま。

 藤原一族の源平合戦で白龍の神子の愛犬がすごく賢かった事から、それ以来代々子供達はある程度の年齢になると育てると言う形で受け継げられている。
 本当はその時期は十五前後が多いらしいけれど、私と相性の良さそうな子がなかなか見つからなかったらしい。

「コスモは私が護ってあげるけれど、コスモも私がピンチの時はちゃんと助けてね」
「クーン」

 ダメ元で頼んでみるとやっぱり頼りない返事が返ってくる。

 この子にとっては精いっぱいの勇気かもしれないけれど、それじゃぁ私のパートナーはむずかしいかも。
 だけど今は赤ちゃんできっと母親と離ればなれになって不安なだけなのかもしれない。
そうだよね?
 まだまだ甘えたい時期なのに、人間のエゴで親と引き裂かれるんだもんね。


「もしかしてお母さんの所に戻りたい?」
「帆波、それは無理だよ。コスモの母親はもう全部分かっているから、戻っても受け入れないだろうな。それにコスモも臆病なだけで、帰りたいとは思ってねぇよ」
「相変わらず賢いんだね。ならコスモ、今日から私が当分お母さん代わりね」

 そう考えるとコスモが可愛そうになり残念だけど返そうとしたら、人間のエゴではなくてコスモ自身が私の元に来ることを望んでいた。
 ただやっぱり赤ちゃんだからホームシックになっているだけかも?
 だったら私がしばらくコスモの母親役になろと思う。
 するとコスモはようやく元気を取り戻し、私の顔をペロペロなめだす。

「お前の相棒は優しい人で良かったな?」
「ワン、ワン」
「帆波は知ってるか? こいつらのすげぇ能力」
「能力?」
「パートナーの運命の相手をいち早く見つけられること」
「そう言えばお兄ちゃん達のお嫁さんにもすぐになついてたね」

 おじいちゃまは楽しげに普通だったら都市伝説的な話を耳打ちするけれど、すぐにお兄ちゃん達の事を思い出して半分だけ納得する。
 しかしお兄ちゃん達の場合はもうパートナーと深い絆て結ばれていて成犬だったから分かっただけで、コスモはまだ赤ちゃんで私の事もよく知らないから今だったら分からないかもしれない。
 だから半分信じる。
 

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ