夢幻なる縁

□2章 偽りの婚約者
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「おじいちゃま、いらっしゃい」
「帆波。また一段と綺麗になったね」

 実家の正門でおじいちゃまを見つけたのでそこで車から降ろしてもらい、自然と笑顔が浮かびそう言いながらダイビング。
 おじいちゃまも相変わらず口が達者で元気そう。
 自然の優しい匂いがして私は大好き。

「ありがとう。それにしても今回は結構荷物があるね?」
「帆波への大切な贈り物だからね? 他の奴ら任せられないよ」

 いつもならカバン一つでフラりと来る人なのに今日は大きなかごを持っているのが不思議で聞いてみれば、お父さんも言っていた意味深の答えに首をかしげる。

 このかごには私の欲しかった物が入っている。
 未知なる鉱石?
 オーパーツ?
 それとも海外の科学書?
 まさか洋服宝石とかじゃぁ……ダイヤモンドなら使えるから欲しいかも?

 様々な可能性を考えていると、かごがガサガサと動き出す。

 ?

 まさか未知なる生物?
 宇宙生物?

 余計にわからなくなった。

「おじいちゃま、一体なんなの?」
「それはまずそこの野郎を紹介してからな」
「え?」

 途端に優しいおじいちゃまから藤原財閥の鬼に変わり殺気まで漂わせる。
 おじいちゃまは私には激甘ではあるけれど、藤原財閥の会長となった今でも鬼として各界に伝がある恐ろしい人だ。
 いろいろとおじいちゃんと似ているのに、二人はと言うかおじいちゃんの方があまり仲が良くはない。
 なんでも出会い頭におばあちゃんを口説き、逆鱗に触れたて騒ぎになったとか。
 それでも私とおじいちゃまを会うことについては何も言わない。
 私のもう一人の祖父だからそこまではさすがに言ってはいけないと理解はしてるらしい。

「藤原会長、初めまして。僕は帆波さんの婚約者で藤堂尚哉と申します」
「君のことはよく知ってるよ。今急上昇中藤堂コンシェルンの御曹司。君が任されている分野は特にいいらしいね? 和人もよくこんな掘り出し物を見つけてきたよ」
「光栄です」

 なのに穏やかに紹介は進んで私の気のせいかと思ったら、やっぱりそれはあり得なかった。

「おいおい、オレを甘く見てくれちゃ困るよ。これはあくまでも表向きの君であり、裏では何やら軍とのパイプを持とうとしてるとか? お前一体何を企んでる?」
「ちょっとおじいちゃまこんなところで藪から棒に何を喧嘩売ってんの?」

ドスを聞かせた声で尚哉さんに問う。

 おじいちゃんと同じ予想をおじいちゃまもしているようだ。
 ただ超慎重派のおじいちゃんと違って、こちらは突っ込んで行くタイプ。

「何も企んでませんよ。ただこの世の中軍と仲好くしてた方が特ですから」
「ものはいいようだな? 帆波、この婚約は破棄にさせて良いか?」
「え、破棄?」

 ここは尚哉さんらしく涼しげにそれなりの答えで否定はするけれども、おじいちゃまが納得するはずもなくいきなりそう言う展開になる。
 もちろん偽りの婚約なのだから破棄と言うことになってもいいはずなのに、聞かれた瞬間嫌だと思ってしまい声が裏返り拒否反応が出てしまう。

「………。帆波、こいつの事が好きなのか?」
「え、まぁ好きか嫌いかと言えば、好きなんだと思う」
「僕もです。帆波さんは素敵な女性です」

 声に出して認めるのは恥ずかしいから曖昧に答え難を逃れようとすれば、尚哉さんも合わせてはくれるけれど肩を抱き寄せると言うお得意のパターンまで繰り出す。
 こうされると心臓の鼓動が高鳴り出し、体に悪い。

 尚哉さんはどこまで本気なんだろうか?



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