夢幻なる縁

□2章 偽りの婚約者
26ページ/38ページ

 いつも通り千代が怨霊を封印すると、消えると同時に拳ぐらいの大きさのクリスタルが現れる。

 それは四神が言う私の心のかけら。
 四神が任せろ言っていたのに進展しないなと思っていたら、怨霊が持っていたから難航してていたとしても無理はない……んなことあるはずがない。
 そりゃぁ彼らが人であったのならば十分考えられるけれど、神様なのだから見逃すはずがない。
 つまり彼らは見つけられるのを恐れているから、自分達に任せろなんて嘘をついた。

「きれいね。一体なんの結晶かしら?」
「怨霊が落としたんだから怨霊の結晶じゃない?」
「にしてはきれいすぎると思いますが」
「あ、それ私の心のかけら。なんか帝都にばらまかれてるらしいよ」
「は、なんでですか?」
「私が四神の神子だから」
『なるほど』

 何も知らない千代達はおっかなびっくりに私の心のかけらを観察を始めるから、私は当然とばかりに真相を話心のかけらをバッグにしまう。
 そんな答えで納得されるはずもなく更なる問いに、いい加減に答えたはずがなぜか納得される。

 四神の神子とは案外便利な言葉かも知れない。

 一方私の怒りを買ってしまった四神達は懐でざわめき初め怯えが伝わるが、許すはずがなくすべてを吐かせるつもり。

―帆波、落ち着いて下さい。話せば分かります。
―さよう。我らは別に隠すつもりなどなく、すべてを集めたら返すつもりでいた。
―愛しい帆波を泣かせたくないからね?
―これは帆波のためだと言うことを信じて欲しい。

 聞き捨てならない見苦しい言い訳を始める四神に、ますます怒りが悪化していく。
 どうやら複数の心のかけらを持っていてしかも私の断りもなく勝手に見ている。
 プライバシーの侵害もいい所だ。

「私用意があるから抜けるね?」
「もうそんな時間? 楽しんできてね」
「また明日ね。姫ちゃん」
「うん、じゃぁ」

 最初から途中で抜けると言っていたので突然切り出しても不振に思われず、温かく見送られ私は家路を急ぐ。





「ネタは上がってんだから、洗いざらい吐きなさい。そうすれば内密に処理をするけれど、そうじゃなかったらおばあちゃんとおじいちゃんを巻き込むよ」
「それだけは勘弁して欲しい。凪はまだしも小松帯刀に知られれば、我らは燃やされ消滅する。そんなことになれば帝都いやこの国は滅びる」
「安心しなさい。あなた達のDNAはすでにサンプリング済み。私は四神の神子だから、復元させるなんて容易だわ」
「我らは神だぞ? 復元などそう簡単に出来るはずがない。そもそもそのデイなんとかと言うものはなんだ?」
「……たまに帆波が小松帯刀より恐ろしいと感じてしまう」
「無理もないですよ。帆波は帯刀の孫。さらにはヒノエの子孫でもあるのですから、逆鱗に触れたら最強かと。それが今回……」

 帰宅した私は一目散に自室に駆け込み四神達を人の姿にさせ激怒すると、まずは玄武が命乞いをしつつ卑怯な手を使おうとするが即座に否決。
 それを侮辱と取った青龍は激怒するも、最早何を言っても無駄だと悟ったの朱雀と白虎は弁解はせず。

 ただその言い方も酷い。

「ごちゃごちゃ言わないでさっさと出す」
『はい、すみません』


ゴロゴロ


 もう一度恐ろしい声で強制すれば、心のかけらが三つも出てきました。
 私が持っているのは一つで、取り込んだのが一つだから計五個。
 これで全部かな?

「……………」
「帆波どうしたのですか?」
「取り込むのは後にしよう。尚哉さんが迎えに来る前に、さっさと支度をしなくっちゃ」

 過去の記憶を取り戻すのが急に怖くなり、やってはいけない後回しにする。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ