夢幻なる縁

□2章 偽りの婚約者
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「梓、萬。いらっしゃい」
「コハクと帆波のスペシャルランチを召し上がれ」

 梓と萬を奥の席まで案内して、すでに用意してあるランチセットをお披露目。

 私と善ちゃんの合作で、オムライスとハンバーグとデザート風のサンドイッチ。コーンスープ付き。
 私達はここの店員なのでマスターは新メニューの試作と言う条件でキッチンを貸してくれた。

「帆波先輩にコハクが? いつの間にそんな仲良くなったんですか?」
「シスター、コハク様。ありがとうございます」

 たぶん色々なことに驚きまくる梓と、平常心のまま感謝する萬。
 二人の対照的ならしい反応に面白い。

「たった今。おかしな誤解が解けて仲直りしたの」
「誤解が解けて仲直りって、まさかコハク?」
「そうなんだ。実は少し前に記憶が戻っていて、姫じゃなかった帆波ちゃんとは幼馴染みだったんだよね。だけどオレが勘違いしていたせいで、姫ちゃんと距離を取ってたんだ。だけどさっきちゃんと話し合って、本当のことが分かったんた」
「コハク、いろいろ良かったね?」

 明るく事情を話せば自分のように喜んでくれ、特に隠したことに怒っている様子はない。

 これは梓が優しいと言うより多少抜けているからだろうか?
 何はともあれホッとする。

「うん。じゃぁ覚めない内に食べよ」
「どれも美味しそうだね? 帆波先輩って、キャラと反して料理も得意なんですよね?」
「何よそれ? 理系女は料理ベタとか言いたいの? これでも異世界では同居先の家族が忙しいから、料理担当だったんだからね?」

 悪気なく思ったことを単純に言ったとしても、そう思われたくもないので厳しく指摘。

 確かに研究は趣味も兼ねてるからよく徹夜もするし周りが見えなくなってしまうかもしれないけれど、けして他に興味がないと言うことでもない。
 食に関してはどっちも好き。

「もう帆波先輩ったら。それじゃ皆さんご一緒に」
『いただきます!』

 弱冠怒り具合が伝わらないまま我が家の日課になっている全員一緒の号令を掛ける。
 こうやって食べるとなぜかさらに美味しくなるのは、やっぱりみんなで食べているからだと思う。

「シスター、このオムライスを前にも食べたことがあると思います」
「なら前にも作ったんだろうね? どう美味しい?」
「はい、とっても」

 迷わずオムライスを一口食べ小声で教えてくれる萬に思い出せないけれどそう聞くと、ほんの少し笑みを浮かべ答えてくれる。
 それが目茶苦茶可愛くて思わずギュッと抱き締めてしまう。

「帆波先輩、いきなりどうしたんですか?」
「だって萬が素直で可愛いんだもん。弟にしたい」
「あ、そう言うことですね。萬、どうする?」
「私は御主人の一蓮です。なのでシスターの弟にはなれません。そもそも私は自動人形です」

 そんな私を最初は驚くもののいつものことだと分かれば悪のりするものの、真面目な萬に一刀両断されてしまい冗談とは言えショックだった。
 そしてこう言うことは今までに何度も経験したような気がする。
 その時の優先順位第一位は当然博士で、博士は萬を自動人形としか考えてなかったからこうなってしまったはず。

「萬、その自分が自動人形だからって言葉禁止だからね」
「え?」
「あ、それ良いと思います。萬分かった?」
「分かりました努力します」

 私と同じ考えを持った梓だからこそ今まで出来なかったことをついに実現する。
 何か言いたそうに不満な萬があっても、梓の命令は絶対だから従うしかないだろう。
と思っている事態まだまだ厳しいか。

「本当に梓さんと姫ちゃんは仲良しなんだね?」
「うん。帆波先輩とは元の世界でもよく遊んでたんだよ」
「だね。今度は善ちゃんと三人あ萬もだから四人でどこか行こうか?」
「いいね。楽しみだな」

 善ちゃんも話に加わりものも弾みで、そう言うことになった。

 このメンバーで遊びに行くとしたら、どこが一番楽しめるんだろう?
 紅葉の季節だし、ハイキングがいいかな?




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