夢幻なる縁

□2章 偽りの婚約者
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「それにしても梓と千代は何をしてたの?」
「萬に新しい童話を買ってあげようとして、千代にも付き合ってもらったんです」
「ついつい夢中になって気づいたらこんな時間だから、帆波を迎えにいくことにしたの」

 変える支度を終えシロちゃんにアオちゃんにも出てきてもらい六人での帰り道。
 真相はやっぱりお迎えがおまけみたいなものだと分かり、しかも微笑ましい事だったのでホッとした。
 萬は神子ズから大切にされている。
 親心のように嬉しい。

「そう。萬は本が好きなんだね?」
「はい。いろんな知識が学べます」
「だったらその童話を読み終えたら教えてね? 我が家の書庫の場所を教えるから」

 萬自身も読書をするのが楽しそうな表情を浮かべるから、私も協力しようと思い書庫の存在を明かす。
 我が家は全員読書家で家にも実家にも立派な書斎があって、童話から専門的な医学書までなんでも揃っている。
 しかも基本的に大雑把で面倒臭がり屋おばあちゃんなのに、元司書なのか細かなジャンル別に整理整頓しているので最早図書館と呼べる書庫だ。
 だから萬好みのジャンルもきっと見つかるはず。
 どんなのが好きになるんだろう?

「ありがとうございます」
「私も見たいです。千代も見たいよね?」
「ええ。恋愛物もあるかしら?」
「もちろん。おばあちゃんとお母さんが大好きだから、いろいろあるよ。梓の世界のもね」

 どうやら萬よりも梓と千代の方が興味を持ったようで、女の子らしいジャンルを聞かれ胸を張り解答。
 恋愛小説以上の恋愛をしているはずなのに恋愛小説は大好きで、こちらに戻る度に恋愛 ラノベや漫画をどっさりお土産にしていた。

「それは楽しみだわ。梓の世界の恋愛に興味があったの。恋愛は自由なんでしょう?」
「そうだね」

千代の瞳はますます輝き期待は高まり続けているようで、これは帰宅したらすぐに案内しなければいけない空気になってしまった。

 千代にお薦めするなら、どんな恋愛ストーリーが良いだろう?
 教師と生徒の禁断物?
 淡い青春物?
 女子高校生と社会人との恋愛?

「御主人のオススメはなんでしょうか?」
「え、私? 強いて言えばアンデルセンとかグリム童話。その童話ピノキオも大好き」
「ならじっくり読ませて頂き、後ほど感想を述べたいと思います。シスターは?」
「私はいろいろ読むけれど、いおパラがイチオシね」
「いおパラ?」
「そう。妹弟パラダイスって言って主人公には可愛い妹と弟が五人いてね?」
「帆波先輩、萬にそう言うのは教えないで下さい」
「御主人?」

 私のも聞かれたから絶賛ハマり中のラノベを教えていると、呆れきった梓は萬の耳を塞ぎ強い口調で釘を刺されてしまう。

 妹弟パラダイスとは、主人公と妹弟の計六人がある日異世界の無人島に飛ばされてしまい帰り方を探しながらそこで暮らすのほほんとしたストーリー。
 梓と千代さんにも貸したことがあって千代さんは面白いと言ってくれたのに、梓にはまったく合わなかったらしく弱冠軽蔑をされてしまった。
 どうも梓はショタロリ系と言うか、こう言う軽い内容はどうも苦手らしい。

「私の好きなのは研究者の論文や伝記。まぁ論文は私の研究室にあるから、書庫にはないんだけど」
「それなら問題ありません。萬、帆波先輩は伝記が好きなんだって」

当たり障りのない解答に変えれば梓はにっこり笑い、萬の耳がようやく解放されその答えを教える。

 梓を怒らせると、迫力があって怖いんだよね。



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