夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
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「なら何?」
「実はですね。藤堂コンシェルンの会長にうっかり私の娘は政治・経済に関心があり博識で将来科学者になりたい言ってしまいまして。そしたら今の時代職業婦人が必要だ。是非息子と結婚させたいと……」
「貴様はバカか? それでも人の親?」

 嫌な汗をダラダラ流し恐る恐る弁解するお父さんに、おじいちゃんの特大の雷が落とされビビりまくる。
 情けなくってみっともないけれど、自業自得だからしょうがない。

「あなた落ち着いて。藤堂コンシェルンなら帆波の能力を思う存分生かせると思うの。息子さんはかなりのやり手で美青年だそうよ」
「それはそうだけど、私縁談なんてしたくない。そもそも私はまだ十八なんだよ」
「もうだろう? 薫はその歳で俺と結婚した」

 私の事をちゃんと考えてくれてるのはありがたいけれど、やっぱり抵抗があり理由をつけて拒否する。

 異世界では二十代前半でもまだ子供なんだから私なんて赤ん坊と同じ。
 だけどここではそんなの通用するはずもなく、今度は眞佐之お兄ちゃんに痛いとこを付かれる。
 確かに十八歳で結婚するのはごまんといる。子持ちだって珍しくない。

「僕は帆波の意見を尊重するけれど、これも人生経験だと思って見合いをしてみたら? もしかしたら気が合うかもしれないよ」
「清人お兄ちゃん。……少し考えさせて」
「ありがとう。なら一週間後また来るね」

 おばあちゃんとおじいちゃんの次に私の理解者である清人お兄ちゃんからも優しく薦められ、打つ手がなくなり窮地に立たされた私は時間を稼ぐことにした。
 眞佐之お兄ちゃんなら駄目って言うけれど、清人お兄ちゃんは怒らずそれだけ言って家族を連れ帰って行く。

「兄貴は帆波に甘いんですよ」
「年の離れた可愛い妹なんだから当たり前だろう? お前は違うのか?」
「そりゃぁ可愛いですよ。だから帆波にはちゃんと幸せになってくれないと困るんです」

 初めて聞く眞佐之お兄ちゃんの私への思いに、少しだけ感動し嬉しいと思ってしまった。





「そう言えば藤堂コンシェルンの御曹司って病弱で療養中じゃなかったけぇ?」
「それが自社で開発した薬の効果が活気的に効いたらしく、今では社長に就任。なんでも新製品を開発して発売して経営はうなぎ登り。今は浅草の復興に力を注いでいて、もうすぐ復興祭が開かれるそうだよ」
「へぇ〜、本当にやり手で、しかもいい人だったりする?」

 縁談するのは別にして相手のことを知る必要があるため、更なる情報をおじいちゃんから教えてもらう。

 私がいない五ヶ月でさまざまなことか起きて、この世界は急激に変わろうとしている。それは良い方向だと良いんだけど、異世界の過去では世界第二次戦争が勃発する。そしてたくさんの人が死に敗北。それは阻止出来ない物なんだろうか?

「それはどうだろうね?  人気取りなのかもしれないよ?  かく言う夕凪も今から楽しみにしてるよ。特に幻燈座に興味津々でね」
「おばあちゃんが? あれそう言えばおばあちゃんは?」

 やっぱり私の縁談相手だからなのか良くは思ってなく、話は復興祭そのものに変わってしまう。
 そこでしばらくおばあちゃんの姿を見てないことに気づく。

「夕凪なら言いつけ通り四神と遊んでるんでしょ?」
「だけどあんなにお父さん達と揉めたのに、こないなんておかしくない?」
「!! 夕凪?」

 まったく心配してないおじいちゃんには悪いとは思いつつ歳も歳なので心配要素を疑問視すると、おじいちゃんの顔は一瞬で真っ青に変わり四神の部屋目掛けて走り出す。
 そんな反応をされると、余計心配になる。






「夕凪!?」
「……っす」

 私達の心配を他所に縁側で気持ちよさげに眠っているおばあちゃんと四神達。
 何事もないようなのでホッとすると同時に、マイペース過ぎるおばあちゃんに呆れて何も言えない。
 幸せそうな可愛い寝顔。おばあちゃんはいつでも幸せそうにしている。
 しかしこれにはおじいちゃんは許せないらしく、手を握りしめ今度は真っ赤に染まっていく。

「夕凪!!」
「……はい?」

 外にも聞こえそうな怒鳴り声におばあちゃんは飛び起きる。四神達は反射的に札に戻り私の懐へ。
 またおばあちゃんへの説教が始まりこうなったら長いので、黙ったまま自分の部屋に避難する。



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