夢幻なる縁
□1章 二代目四神の神子
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「もちろん大歓迎です。みんなも良いよね? 帆波先輩は科学者の卵で頼りになるんです」
「私も歓迎よ。女の子が増えて嬉しいわ。私は駒野千代」
梓と一緒に私を快く歓迎してくれるこの子が白龍の神子。
どことなく千代さんの面影が残っているのは気のせい?
何がともあれここで自己紹介タイムに突入。
「俺は高塚と駒野が良ければ構わない。俺の名は有馬一」
さっきの軍人さんがまず初めに同意するものの、いかにも軍人ぽく自分の意見ではなさそう。
「俺は賛成だよ。彼女が四神の神子である以上に帯刀の孫娘なら申し分ないからね。俺の名はダリウス」
おじいちゃんの知り合いの鬼の人。絵に描いたような王子様。
「僕もです。帆波くんのことは赤ん坊の時からよく知っています。好奇心旺盛で活発な良い子ですよ」
秋兄は相変わらずの女性殺しのようだ。
これが素なのか確信犯なのかは分からない。
「私も反対する理由はありません。私はルードハーネと申します」
多分最年少だと思うゴーグルが似合う少年。有馬さんと同じ堅物そう。
「俺はどうでもいい。虎で良い」
いかにも俺様的な野蛮そうな人は、私には興味ないらしい。
名前負けしてないのか、それともあだ名だろうか?
「我も反対理由はないが、後でお主の詳しい話を聞かせて欲しい。我は星の一族の萩尾九段」
古風なおっとり系の少年は、目を輝かしてそう言う。
どうやら彼は私の素性に興味があるらしい。
私も星の一族には興味があるから、ここはギブアンドテイクしよう。
「あんたもわざわざ厄介ごとに自ら首を突っ込むなんぞ、とんだお人好しだな。俺は里谷村雨」
「そうですかね? でもこの世界が滅びたら困ります。村雨さんだってそうですよね?」
「確かにそう言われるとそうだな」
随分他人事のように覚めた口調で身に覚えのないことを言われ、逆にそうなった場合を言うと考えを改めてくれた。
私がお人好しだったら世界の大半がお人好しになる。
しかもこの場合お転婆とかお節介じゃないんだろうか?
だけど里谷村雨って、どこかで聞いたことあるような?
「? コハク、元気ないけどどうしたの?」
これで全員の自己紹介が終わったと思ったら、部屋の片隅に座っている赤毛の少年が残っていた。不思議そうに声を掛ける梓。
?
「善ちゃん?」
少年の顔を見ると善ちゃんの面影が残っていて思わず名前を呼んでしまう。
すると善ちゃんはビクッと怯え、他の人達は驚きの眼差しで私を見つめる。
あまりにも予想外過ぎる反応に、私も戸惑いよく考え直す。
そう言えば梓は少年の事コハクと呼んでいた。
そして少年は、私を覚えていない。
外見は似ているけれど、首の辺りに大きなアザがある。
これはひょっとしなくても人違い?
「帆波先輩はコハクを知り合いなんですか?」
「私の幼馴染によく似ているんだけど、人違いだね? だって善ちゃんが私を覚えてないはずないもん。さっきおばあちゃんと善ちゃんに会いたいって話してたから錯覚したんだよ」
人違いだと分かったら急に恥ずかしくなり、急いで勘違いだと言うことを知らせる。
だけどあんな酷い別れ方をしたら、怒って忘れているかも知れない。
「帆波先輩、違」
「梓さん!! オレが帆波さんのような財閥家のお嬢様と知り合いなはずないじゃない?」
梓が何か言い掛けようとするとコハクくんは声を荒げ、なぜか悲しそうに寂しい台詞を言う。
それで私は理解した。
やっぱりこの少年は善ちゃんであの時のことを怒っていて、きっと私と関わりたくないから忘れたふりをしている。
それならば悲しいけれど、私も知らないふりして距離を取ろう。