夢幻なる縁
□1章 二代目四神の神子
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「もちろんです。帆波は明るく好奇心旺盛で素敵な女性だと思います」
「え?」
「帆波?」
売り言葉の買い言葉でお世辞でしかない台詞なのに、聞いた瞬間身体中が熱くなり不覚にもときめいてしまった。
さっきキスされたばかりなのに、なぜそんなことになる?
私のそんな不可思議な現象にいち早く気づき、顔がみるみる青ざめふらつく。
「帯刀さん、大丈夫ですよ。帆波を信じて暖かく見守り」
「違う。私はこんな人好きじゃないから」
誤解しまくるおばあちゃんに必要以上に声を荒下で全否定。
尚哉さんなんか好きじゃない。
こんな女遊び好きな人………。
「そこまではっきり言われるとさすがの僕も凹むよ」
「あ、ごめんなさい。その好きじゃないと言っても、嫌いでもなくって普通?」
言う割りにはそんなに凹んでないように見える尚哉さんだったけれど、それでも罪悪感が生まれ反射的に謝り弁解してしまう。
別に尚哉さんが凹んだって嫌いなら別に構わないはずなのに、なぜか嫌いになれないからそれはいやだった。
なんで?
「帆波は、優しいね?」
「………」
いかにも計算勝ちって言う微笑みと、上から目線のお礼をされる。
−帆波、大通りの方に怨霊がいます
−強い嫌な気を感じる
「うん、そうだね。梓、千代。怨霊が大通りに出現したみたいだよ」
不意に感じる重苦し怨霊の独特な気がしてきたと思えば朱雀と白虎からも警告されたので、梓と千代に知らせる。
こう言う時ぐらい怨霊も気を使って大人しくして欲しいけれど、それを怨霊に期待するのもおかしな話。
「それは困るよ。姫様達、ここはお任せするよ」
「はい! 任せて下さい」
「おじいちゃん、おばあちゃんを連れて逃げて。青龍を護衛に付ける?」
「不本意だけれど、そうさせてもらうよ。夕凪の身の安全の方が大事だからね? 私の手をけして離さないこと」
「もちろんです。みんな気を付けて」
おじいちゃん達にも手伝ってもらう手段もあったけれどさすがに無理なため避難することを薦めると、躊躇いもなくおばあちゃんの手を握りしめそう約束させる。当たり前のようにおばあちゃんは頷き、そう言って青龍を先頭にして我が家に向かう。
我が家は四神の結界が張ってあるし、何より青龍がいれば安心だ。
「では我々も急ごう」
「ですね?」
「虎と村雨さんに合流できれば良いんですが」
「大丈夫よ。きっと合流できるわ」
そんな事を話ながら大通りにみんなで行こうとすると、誰かに腕を捕まれ行く手を阻まれる。
「どうして帆波も行くの? 邪魔になるだけだよ」
「大丈夫ですよ。私は四神の神子ですから。尚哉さんは安全な場所に隠れて下さい」
それは尚哉さんで心配してくれるので正体バラし安心させたと思うのに、尚哉さんは腕を離してはくれないどころか強くなる。
「なら帆波は僕の護衛。もし怨霊に襲われたら、大変だからね?」
「言われてみれば確かにそうですね? 安全な場所に送り届けます。梓千代私はそれから行くから」
「ありがとう」
「分かりました」
尚哉さんの言い分はごもっともで怪我や死んだりしたら後味が悪いので、一先ず怨霊は梓達に任せることにした。
事実私がいなくてもまったく問題がなかったりするけれど、それは言うと悲しいから言わない約束。
でもなんだろう?
私に護衛を頼んでいるのに、あんまり怯えてない。
むしろどこかこの状況を楽しんで……さすがにそれはないか。