夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
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「メリーゴーランドに乗りに行こう」
「メリーゴーランド? 馬や馬車に乗って廻る遊戯だな?」
「凪も目を輝かせて、帯刀に乗ろうと頼んだたな? そんなもの面白いか?」
「面白いと思いますよ? 私も帆波と乗りたいです」
「我も帆波となら乗りたいね? 帆波、馬に我と乗らないか?」
「朱雀、白虎。抜け駆けはズルいぞ。もちろん私も乗る」

 メリーゴーランドは四神達も知っていて、青龍以外は興味津々で私を乗るのに誘う。
 しかし青龍は一見興味無さそうに見えるけれど、ツンデレだから実は一緒に乗りたいはず。
 千代の乗っている可愛い姿を拝めるだけしか考えてなかったけれど、乗ってみるのも良いかも知れない。ただここで誰かを選べば復興祭は破滅祭へと変わってしまう。
 それだけは何が何でも、避けなければ。

「ならみんなで馬車に乗ろうよ」
「それはよい考えですね? そうしましょう」
「仕方がないね?」
「帆波がそこまで言うのならば」
「青龍は相変わらずツンデレだな?」
「うるさい」

 これがきっと一番良いと思う選択をしてみると、反感もなく万丈一致で決まる。
 丸くまとまりホッとしてメリーゴーランドに向かおうとすると、

「あれ、村雨さんと虎だ。二人してどこ行くんだろう?」

 二人だけで歩く姿が目に入る。

 見た目からしてメリーゴーランドに不釣り合いな二人だから、、おそらく梓達とは別行動をしているんだろう。
 特段驚くことでもないし用もないから、ここはスルーしとくか。

 そう思っていると二人と視線が重なってしまい、虎はなぜかニヤつきこちらにやって来る。

「なんだよ帆波お嬢様。新しい男を四人も引き連れて、やっぱり遊びたかったんじゃねぇか?」
「その紛らわしい言い方止めてよ。誤解されたら迷惑」

 そしてやっぱり私は構われる。

 一発殴ったぐらいでは分からないただの馬鹿?
 それともどMとか言う奴?

「は誤解? ……本当にただ遊ぶだけなのか?」
「そうよ。何下品なこと考えてるの?」
「お前も梓と同じ小便臭い餓鬼かよ?」

 真相を知った途端、つまらなそうに暴言を吐き捨てる。

 その態度にムカついて一発お見舞いしてやりたかったけれど、こんな野蛮人を相手にするだけ時間の無駄。私が我慢すれば良いだけのこと。

「おい、それ以上我らの神子を侮辱するんじゃない」
「どうやら藤堂尚哉よりもこの人の子をどうにかするのが先決のようですね?」
「いくら八葉候補だとしても、容赦はしないよ」

 しかし再びぶちギレた四神達は、私を虎から守るように前に出る。

 そうなるのも分からなくもないけれど、私はまだあなた達の事を話してないんですが。
こんな形で暴かれるなんて最悪。
 でも八葉候補って?

「は、やるんならやってやるぜ?」
「人の子が我らを相手にする? 良い根性をしてる」
「おい、本条落ち着け。藤原、この四人は一体?」
「……人の姿をした四神です……」
『!?』

 虎だけなら余裕で誤魔化せても村雨さんには無理なので潔く暴露すると、いくら野蛮人の虎でも驚き開いた口が塞がらず。
 少なからず常識を持ち合わせているらしい。

「たまにこうして人の姿になってもらって遊んでいるんです」
「お前には驚かされてばかりだな」

 と村雨さんも驚きは隠せず、当たり障りのない反応を見せる。
 もちろん私には驚かせてる自覚はないんだけど、相手にして見ればそうなのかも知れない。

 四神の神子。
 異世界に留学。
 婚約。
 四神の人の姿。

 うん
 これだけ揃えば誰だって驚くことしかないね?

「ですね? それでは私は梓達と合流するので、この辺で失礼します」
「ああ、気を四人もボディーガードがいれば心配しなくても良いか」
「さよう。我らがいれば怨霊の百体ぐらい一気に襲ってこようと、容易く退治出来る」
「そうか。じゃぁな」

 どうも青龍は無自覚で大げさに胸を張って言ってしまう癖があるけれど、神様と言うこともあり信じる人が多数なので私も疑問に思っても口には出さないでいる。
 案の定村雨さんも疑うことなく信じたらしく、会話に入ってこない虎と裏路地に入っていく。


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