夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
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「じゃぁ、また後でね」

 と帆波先輩は言って、藤堂さんに連れられどこかに行ってしまった。

 本当も何も帆波先輩はチャラくて軽いやさ男は嫌いなはずなのに、なぜか藤堂さんのことが気になっているらしく偽りの婚約者になってしまった。
 本人曰くうるさい兄から解放されるだけと言っているけれど、それだけの理由じゃないような気がするんだよね?
 だって私の世界では化粧なんてしているの姿を見たことがないどころか、たまに寝癖が残っていたるようなおしゃれにも興味がない制服の上に白衣を羽織った姿が主だった。
 それなのに今は毎日おしゃれな服を着こなしていて、それにあった化粧もしていてすっかり大人の女性になっている。

 もしそれが恋だったとしたら、相手は藤堂さんなんだろうか?
 私と千代は九段さん推しなんだけどな。

「フム。せっかく帆波といろいろ廻ろうと計画をしていたのだが」
「そうなの? だったら最初に誘わなけゃ駄目でしょ? 相手はあの藤堂さんなんだから、もっと積極的になりなさい」
「そうだな。次回からそうする」

 九段さんの方は帆波先輩に気があるらしく誘えなかったことに残念がるけれど、千代の強気な助言で前向きになってくれる。

「けっ、あの生意気な暴力女のどこが良い?」
「いや、あれはどう考えても虎が悪いんだと思うよ」
「そうだよ。虎。帆波は本気じゃない限りちょっかいを出さない方がいい。帯刀が怖いからね」

 自業自得なのに虎の機嫌は未だに最悪だけれど、周囲は変わらず冷たい視線。
 ダリウスは苦い顔をして、それはどうかと思う忠告をする。

 帯刀さんがいなかったら、ちょっかい出して良いんだろうか?
 ダリウスの考え方も共感できない。
 そんな考えがあるから、帯刀さんは怒って帆波先輩を護るんだろうな?


「おーい梓さん。みんな」

 そんな時コハクの陽気な声が聞こえ振り向くと、やっぱりコハクと有馬さんと片霧さんがやって来る。
 ただ有馬さんの様子が少しおかしく、頬を赤く染まらせいる。

「お待たせして申し訳ありません。梓さんも駒野さんもその服とてもお似合いですよ 」
「うん。二人ともすごくきれい。さすが女の子だね」
「……ありがとう。これは千代と九段さんが選んでくれて、千代の服とヘアーアレンジは帆波先輩が選んだんだよ」

 さっきも散々誉められここでも誉められそれは嬉しいんだけれど、やっぱり恥ずしいから千代の話へと持っていく。

 私より千代の方が断然可愛い。

「帆波さんと言うか凪さんが好きそうな組合わせですね? 所で張本人の帆波さんは?」
「さっき藤堂さんに連れていかれました」
「藤堂? あの二人は知り合いなのか?」
「有馬は相変わらずこう言う話には疎いんですね?」
「どう言うことだ?」
「藤堂さんと帆波さんは、先日婚約したんですよ」
「!! そそうなのか」

 昔馴染みの片霧さんはすぐに理解し分かってない有馬さんに説明すると、心底驚く有馬さんとコハクは一瞬だけ寂しそうな表情を見せる。

 帆波先輩と会ってからのコハクはどこか様子がおかしい。
 人懐こいコハクが帆波先輩とは距離を取っているようで、今日も帆波先輩んちに迎えに行くと言ったら現地集合がいいと言い出した。
 帆波先輩もそんなコハクに気を使っているようで、やっぱり距離を取っている。
 私としては二人はもう仲間なんだから仲良くして欲しい。

「梓、浮かない顔してどうしたの?」
「うん。余計なお世話だとは思うけれど、帆波先輩とコハクが仲良くなって欲しいなって」
「そうね? まだ一週間ぐらいしか経ってないのもあるんだろうけれど、あの二人の間には不思議な壁があるわね?」
「そうなんだよ! コハクは人懐こいのに帆波先輩を避けてる風に見えるんだ」

 そんなに顔に出ていたのか千代に心配されてしまうので悩みを打ち明けると、千代も同じ違和感を持っていてそのまま話し込む。
 実は千代にお節介だと言われそうだったから相談しなかっただけで、本当は相談したかった。

「でも仲良くしすぎたら、帆波が恋敵になるんじゃない?」
「え、なんで? コハクと私は親友なんだから、そうなったらそうなってもいいよ」

 いくら言っても私とコハクの仲を誤解している千代に、いつものように笑いながら軽く交わす。

 だけど千代は帆波先輩と九段さんをくっつけようとしてたんじゃなかったっけぇ?
 それなのにいきなりコハクが候補に挙がるなんて、ただ私をからかっているだけ?
 まぁ私は別に藤堂さんじゃなければ、どっちでもいいけどね。
  
「もう梓も帆波同様恋愛の事になる尊いわよね?」
「そうかな?」

やっぱり今回も誤解が解けずため息をつかれるだけだった。


「ご婦人方、そろそろ復活祭を見て回りませんか?」
「え、あはい」
「梓、続きは帰ってからにしましょ?」
「そうだね。どこ行こうか?」

 すっかり当初の目的を忘れていたから、片霧さんに言われてよかった。
 みんなを見ると苦笑されていて、特に虎の機嫌が悪い。
 帆波先輩のことまだ根に持ってるんだ。

「まずはいろいろ見て回ろうよ。俺そう言うの好きなんだ!」
「あ、私も。お店も気になるけれど、こう言う雰囲気も良いよね?」
「分かる分かる」

 すぐにコハクから提案され私も同じ思いで、嬉しくて飛び付き話に乗る。
 コハクと同じで嬉しいな。

「ならそれで決まりね? 私はメリーゴーランドに乗って見たいわ」
「だったらそこに目指して行こう」

 千代も行きたい場所を言ってくれるから、有意義な時間を過ごせそう。
 今の千代がメリーゴーランドに乗ったら、おとぎの国のお姫様のように可愛いんだと思う。
 だとしたら帆波先輩と凪さんに教えといた方がいいかな?
 スマホと言う高度文明を帆波先輩が復活してくれたおかげで、待ち合わせは楽に出来るようになった。

 もし都合がついたら五十分後メリーゴーランドに来て下さい。
 千代が乗りたいそうです。




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