夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
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復興祭当日


「………」
「おじいちゃん、どうしたの?」
「………なんでもない」

 尚哉さんの約束通り買ってもらった服に合わせアクセサリーや化粧をして整えリビングに行くと、おじいちゃんは元気なく私を見るなりため息をつく。
 絶対に何かありそうなのに、聞いても隠されまた大きなため息を付かれる。
 いつものおじいちゃんなら新しい服やアクセサリーでもしていると、すぐに大袈裟すぎる誉め言葉が来るって言うのに。
 そう言えば、四神達もこの服については語らない。
 まさか似合っていないとか?

「今日の帆波はすごい大人っぽくて綺麗だよ」
「おばあちゃん、ありがとう」

 不安が過る私におばあちゃんだけが、褒めてくれたのが嬉しくて抱きつく。
 今日のおばあちゃんはお気に入りの着物。おじいちゃんから初めてもらった大切なものなんだって。

「帯刀さんもいつまでも拗ねてないで、何か言ってあげたらどうですか?」
「私は拗ねてないよ。帆波だってもう恋を知る歳で私から巣立つことぐらい理解している」
「なら?」
「悔しいんだよ。偽りの婚約者の分際で、帆波の魅力を熟知し引き出せる。私もそろそろ大人の服も似合うと思い贈ろうとしていたのに、先を越されてしまった」
「まったく困った人ですね?」

 時より見せる頼りになるおばあちゃんの誘導で、あっさりと見事におじいちゃんの可愛らしい本音を引き出す。そう言うのを嫉妬とも言う。
 知ったおばあちゃんはそう言いつつも微笑み、おじいちゃんの手を握る。
 だけどそれはつまり似合うと言うことで、おじいちゃんがそこまで言うなら間違えない。

「それと帆波。あの男には注意しなさい。シロとクロに奴の事を調べさせたら、どうやら奴は養子と言う影武者らしい」
「え、そうなの? なら本物はまだ静養中って事?」

 相当尚哉さんの事が気に入らないらしく、神を巻き込み大事になりつつある。
 しかし養子ならおじいちゃんもそうだったんだから、びっくりするけれど疑う程ではない。

「ああ。そうなってくると、経歴も疑わしくなってくる。確かに奴の技量は高く認めざる終えないけれど、女遊びが派手で来るもの拒まずらしい」

 女性関係はおばあちゃんにも言われていたからなんとも思わなく、どこか他人事のように思えて警戒することはない。
 それにそう言う人は女性に困っていなさそうだから、私みたいな冴えない上にバックが怖い子までちょっかいを出すとは思わない。

「私には四神がいるから大丈夫だよ」
「それもそうだね?」
「私は帯刀さんの若い頃にそっくりだと思いますけど」
「そう? 私はそんなに女遊びが派手だった?」
「はい。最初の頃は日替わりでしたよ」
「………。奴も私のようになれば良いけどね?」

 今日のおばあちゃんはいつもと違って、おじいちゃんを言い負かしてしまい言い直させる。
 この前言っていたことは本当のようだ。

「おじいちゃん見たい人なら、本当に婚約しても良いんだけどね?」
「それは嬉しいような嬉しくないような発言だね?」
「帆波お嬢様、ご友人の方達が来ましたよ」

私の言葉にますますおじいちゃんを困らせていると、お菊さんがやって来て梓達が来たことを知らせてくれる。



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