夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
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 若い女性に流行りのブティックに入店するなり、梓は千代と九段さんの着せ替え人形化。
 まるでファッションショーのように様変わりして、恥ずかしがりながらも嬉しそうな梓が微笑ましい。
 少しだけ私も加わりたくもなるけれど、そんなことしたら収集付かなくなりそうなので、今日の所は第三者で感想を求められたら言うだけにしてる。
 それにしても梓は何を着せても似合っているから、見ているだけでも飽きないな。
 そして

「ねぇ、千代。これを着てみてよ。絶対に似合うから」

 懸命に選ぶ千代に私は少女趣味全開のフリルが付いたピンクのワンピースの試着を薦める。
 梓だけでは物足りなくなったのと、千代の可愛い女の子ファッションを見たくなった。

「帆波先輩、ナイスです。その服千代に絶対に似合うよ」
「そうだな。我も千代の洋服姿を見てみたい」

 それを見ていた梓と九段さんは私と同じで、テンション高めに後押しする。
 思えば復興祭でよそいきの服が必要なのは千代もだ。

「そう? なら試着してみようかしたら」

 満更ではなくニコニコの千代は断ることなく、ワンピースを受け取りすぐに試着室に入る。
 これで買ってくれること間違えなし。

「それで梓は決まった?」
「はい、とっても素敵なのがありました。帆波先輩は本当に買わないんですか?」
「うん。私の事は気にしないで」

 私の事を気にしてくれる優しい梓だけど、買うつもりがなかったので笑顔でそう返す。

 これ以上数を増やしても着ていくところがない。

「なら僕が選んで買ってあげるよ」
「え、尚哉さん?」
「帆波の姿が見えたから入ってきたんだけど、お姫様達と一緒だったんだね?」
「はい。でも梓の付き合いで来ているだけなので、お気持ちだけありがたく戴いておきます」

 聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと、そこには尚哉さんがいた。
 ただ名前を呼ばれただけなのに、鼓動が高鳴り幸せな気分になる。
 こんなこと今までなかった。

「そんなこと言わずにさ。こう言う時はフィアンセの僕を立てるもんだよ」
「だったら遠慮なく」

 またもや尚哉さんのペースになり偽り婚約なんて言えない手前、言われた通りに快く頷きお願いする。
 偽りの婚約者にそこまで気を使う必要はないと思うんだけど、やっぱり世間体の問題だろうか?

「そうそう。僕はセンスが良いからきっと気に入ると……そのネックレスどうしたの?」
「祖父にもらいました」
「…………」

 彼が望む答えに自信過剰な答え方をされるけれど、ネックレスを見た途端顔色が変わる。 とてもじゃないけれど分からないとは言えなくて、とっさにおじいちゃんからの贈り物と言うことにした。
 すると尚哉さんは、ショックを受けたように言葉をなくす。

「尚哉さん?」
「あ、ごめんごめん。それで君が似合いそうな服は……」

 明らかに何かを隠し無理して話を続け、私の服を探しに行く。
 多少気になりつつも、誰にだって秘密の一つや二つ持っているんだから、詮索するのは野暮なこと。
 私だって誰にも言えない秘密ぐらいある。

「みんな着てみたんだけど、おかしくないかな?」

 試着室からそう言いながら、頬を赤く染めた千代が出てきた。
 その姿はまさに天使のような愛らしい姿に、私だけではなく二人も口を開けたまま見とれている。想像以上の姿。

「あの〜、黙ってないで何か言って欲しいんだけど……」
「千代ちゃん、可愛い〜」
「え、え?」

 何も言わないことに不安になった千代が恥ずかしげに問うのをきっかけに、私の悪い病が再発してしまいムギュッと抱きしめてしまうのだった。

 萌え可愛いは正義です。



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